◆「弱い立場に置かれた人」だが、弱者ではなく「強い人」

KBC臼井さんは、福岡県警南警察署に覚醒剤所持事件で検挙された男性が、捜査に不正があると訴えたことについてのドキュメンタリーを作っています。1994年でしたが、違法に作成した供述調書で強制捜査の捜査令状を取得していたという疑惑が出てきました。それを徹底的に調べていくドキュメンタリーについて説明しました。
臼井さんは「とにかく、相手の目がすごい。早口でまくしたててしゃべるんだけど、その目を見ると、ものすごい力があって、その力に圧倒された。たったひとり、孤立無援の方と、警察という圧倒的な権力との間で、表現に取り組んでいった」という話をしました。
それからNHKの吉崎さん。目の前で起きたことをいち早くというよりは、ディレクターなので「このテーマ」と決めて、しっかり取り組んでいくという仕事をしてきました。特に水俣病の問題について、30年間取り組んできました。

吉崎さん:僕がずっと取材させてもらっている、胎児性の患者さん。お母さんが魚を食べて、生まれた時から水俣病を発症した方たちがいらっしゃるんですけど、この出会いが、こういう仕事を続けている原点になっていると思うんです。「弱者」という言葉もあるんですけど、全然弱い人じゃないんですよね。「弱い立場に置かれた人」なんですけど、僕は「強い人だな」と思っているんですよ。歩くことも話すこともできず、車椅子に乗ってずっと写真を撮っていた方が、写真展を開くまでを追いかけて、番組を作らしてもらったんです。途中から行政が写真展を開かせないようなことをやったりするんですけど、しゃべれないんだけどもう腹の底から「ウーッ」と大きな声を出して、「僕はやりたいんだ!」と訴えるわけです。自分も困難な状況があると思うんですけど、そういう時に「やっぱり頑張らなきゃ」と。僕は本当に学ばせてもらった。
「弱者ではなく、弱い立場に置かれた人で、むしろ強い人」。とてもいい言葉です。さすが、長い取材を重ねてきている、と思いました。














