◆パーソナルは突き詰めるとパブリックに


金平さんは「栄文さんから非常に大きな影響を受けた」と言っていました。『あいラブ優ちゃん』は当時11歳の長女・優ちゃんと家族を、栄文さん自身が撮影した番組です。全く古びていません。優ちゃんは貴ノ花が大好き。九州場所で福岡に来た貴ノ花に会えたのですが、優ちゃんはすごく恥じらって、近寄りたいのに近寄れない。親の陰に隠れて、散々ためらった末に突然、あぐらをかいていた貴ノ花の膝の上にドンと座っちゃう。すごく愛らしいシーンがありました。

金平茂紀さん:それこそ何の打ち合わせもない。恥ずかしがって、なかなか近づこうとしない。人間が持っている美しさですね。ドキュメンタリーって、やっぱりすごく豊かな世界だなと感じました。こういう番組を公共財として、みんながなるべく見る機会がたくさんあった方がいい、と思いますけどね。一番公共的なテーマなんですよ。一つのファミリーのプライバシーみたいなものを全部開け放して作っているわけですが、そのことによって「公共とは何か」とすごく考えさせられる。パーソナルなストーリーは、突き詰めていくと公共につながる。僕の仕事の基盤にはパブリックがある。

僕らの目の前にはいろいろな公共性がいっぱいある、ということを金平さんは強調していました。