世界遺産「ウッドバッファロー国立公園」は、九州よりも広い面積を持つカナダ最大の国立公園で、赤・白・青・緑とカラフルな平原が美しい自然遺産です。ここに世界最大のビーバーが作ったダムがあります。

ビーバーは丈夫な歯で木を削り倒し、それを水中で組み上げて巣やダムを作るのですが、ウッドバッファロー国立公園で見つかったビーバーのダムは、実に全長870メートル。あまりにも奥地のため陸路で行くのが難しく、番組ではヘリコプターで空撮したところ、空から見て初めて全体像が分かるスケールの大きさでした。

このダムは一匹のビーバーによるものではなく、何世代もかけて複数のビーバーが作ったものだと考えられています。

驚異の土木技術を持つビーバーですが、カナダでは公式のシンボル=国獣に指定されていて、この国の歴史と深く関わっています。
世界遺産「ケベック旧市街の歴史地区」
カナダ東部にケベックという古都があり、「ケベック旧市街の歴史地区」として世界遺産になっています。17世紀の植民地時代、北米にやってきたフランス人が初めて築いた本格的な街で、その目的はビーバーの毛皮を手に入れるためでした

当時のヨーロッパ上流階級では、ビーバーの毛でつくったフェルトの帽子「ビーバーファーフェエルトハット」が大流行していました。極寒かつ水中で暮らすビーバーの毛は細く軽くなめらかで、フェルトにすると光沢と張りがあるうえに摩擦にも強い・・・という性質で帽子にぴったりの高級素材だったのです。

あのナポレオンがかぶっていた二角帽子もビーバーのフェルト製で、軍人や王侯貴族に大きな需要がありました。そのためビーバーはヨーロッパにも生息していたのですが、乱獲されて激減。さらなるビーバーの毛皮を求めて、イギリスやフランスから多くのヨーロッパ人が北米にやってきたのです。そしてビーバーの毛皮のヨーロッパへの輸出は、莫大な富を生み出しました。