■関東大震災を“予見”した学者 差し止められた遺体の写真を掲載した

関東大震災の18年前、「来るべき地震で最悪10万人以上の死者が出るおそれあり」と指摘していた、東京大学助教授で鹿児島市出身の今村明恒。震災後にまとめた震災予防調査会報告です。その中で今村はこう訴えました。
「健忘症ノ我同胞ハ既ニ大正ノ惨禍ヲモ忘レントシテ居ル」
10万5000人もの死からわずかに1年半、今村の目にはすでに風化のきざしが見えていました。
「惨状ヲ物語ル写真ガ 最モ生々シタ観念ヲ与へ、最モ崇高ナ訓戒ヲ加フル、横死者ノ写真ハ 有益ナ教訓ヲ後世ニ貽(のこ)ス」
悲惨な写真こそ教訓を残すと言い切り、差し止められた3万8000人が亡くなった被服廠あとの写真を、内部向けの報告書で掲載しました。

今村の思いは?
(名古屋大 武村特任教授)「当時、遺体の写真なんてものは載せてはいけないとの話になった。だけど彼(今村明恒)はどうしても載せたかった。国民の生命・財産を救いたい、そのときに、国民がそれぞれ持っている防災意識を高くしておくことが非常に重要だということを、心底思っていた」
次なる地震から人々の命を守ろうと、警察・内務省にも引かず尽力した今村明恒。教訓とは?備えとは?その思いはいまも古びていません。