「伝統にとって一番大事なのは土地だよな」

ここは新たなスタート地点。近藤さんは、来年には、この場所で作品づくりを再開したいと考えています。

近藤さん「最終目標は、以前のようにここで住んで暮らして、ここで焼き物を作り上げる。そこを目標にして頑張っていきたいと思っている」

近藤さんがいま、目指しているのは「令和の大堀相馬焼」。国内最大の美術展「日展」に去年出品した「象嵌(ぞうがん)」という作品は、制作に3か月あまりを費やしました。

近藤さん「この文様を掘っていく掘ったところに違う色粘土を埋めていく。絵の具の代わりに粘土なんです」

近藤さんはさらに、以前、大堀相馬焼に使われていた技のひとつ「筒描(つつがき)」を復活させました。スポイト状の道具に絵の具を入れて絞りだしながら文様を描きます。

近藤さん「幕末・江戸中期ぐらいから明治半ばぐらいまで、大堀で盛んにやっていた技法だった」

伝統を受け継ぐための「新たな挑戦」は震災前から変わりません。しかし、ふるさとを離れた12年間で“大切なもの”を思い知らされたといいます。

近藤さん「伝統にとって一番大事なのは土地だよなと。土地は時代がいくら進んでいようが何しようが土地は買えない。ここ(いわき市)で大堀の土地を向こうから買ってくるわけにはいかないから」

ここから先、伝統をつなげるために必要なこと、それは後継者です。

近藤さん「今散り散りになっている窯元さんとか、はたまた全然関係ない全国の焼き物を志す若者とか、そういう人たちを大堀の地に呼び込んで、そこで新たな窯元になってもらう。だから私は最初の第一歩を踏み出す礎になれれば、なれればというよりも、ぜひなりたいなと思っています」

大堀相馬焼の「産地復活」を目指して、この小さな作業小屋から近藤さんは新たな一歩を踏み出します。