職員の経験不足に1万超の虐待記録

職員の経験不足が課題となる中、全国に先駆けて、虐待の対応にAIを活用しているのが三重県です。

三重県児童相談センター 中澤和哉所長
「新規採用の職員にとっては非常に心強いツール。経験不足のところのフォローをしてもらえる」

三重県では3年前からすべての児童相談所に「AiCAN」を導入。一つの虐待事案への対応日数が半分の100日程度になるケースも報告されるなど、一定の成果を上げています。
ただ、ここまでに至る道のりは決して平坦なものではありませんでした。三重県では2012年、虐待によって幼い命が失われる事件が相次いで発生。行政が虐待の兆候を掴んでいたにもかかわらず、適切な対応をとれませんでした。

三重県児童相談センター 中澤和哉所長
「『危険度をきちんと査定できる仕組みがない』という指摘をいただいた。『やれることは全部やらなければいけない』という考え方で、業務の全部を見直しした」

そこで、2014年から「リスクアセスメントシート」と呼ばれるチェックシートを導入。項目に一つでもチェックがつけば、職員が緊急に対応する仕組み作りを始めました。
こうして集め始めた虐待に関する記録は、今ではおよそ1万3000件に。そのすべてをAIが学習し、膨大な記録に精通した“ベテラン”として職員を支えています。

三重県児童相談センター 中澤和哉所長
「AIはあくまで仕組み・手段・ツールなので、データがないとAIは動かない。業務負担が発生するけど『やっぱりやる意義あるよね』という理解が自治体とか児童相談所の中で進んでいくことが大事」

4月1日に発足する「こども家庭庁」でも虐待防止にAIを活用する方針で、2024年度にも全国共通のシステムの運用を始められるよう準備を進めています。

株式会社AiCAN 高岡昂太CEO
「AIはあくまで手段というところで『魔法の杖』ではないので、何かAIにかければ全て解決というわけではない。地域ごとの特性や地域における社会資源を生かしていくことが重要」