終わりにしたいが子や孫のことを考えると終わりにできない

カネミ油症認定患者 渡辺 道子さん:
「(PCBは)薬のカプセル(錠剤の艶だし)とかにも使われてたって聞くし、本当恐ろしいものを作ってたんだなと思って。
もう本来なら終わりにしたいんですよね、私達も。
でも子供たちとか孫のことがあるから終わりにできないんですよね」

化学物質に無知だった時代、経済発展の代償ともいえるカネミ油症事件。

6月には次世代調査の初の解析結果が公表されます。
かつての “夢の物質”が及ぼす残酷な被害の一部が、また明らかになろうとしています。

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【カネミ油症事件】概要

1968年(昭和43年)カネミ倉庫(本社 福岡県北九州市)が製造する食用油に『PCB・ダイオキシン類が製造過程で混入』した事が発覚。
西日本一帯で多くの人に深刻な健康被害を引き起こした。

ダイオキシン類の半減期は人の寿命を越え、被害者の体内には未だ高濃度に残存している事がわかっている(全国油症治療研究班)。
『胎児には胎盤等でブロックされほとんど移行していない』とされているが、その一部は移行し、“死産や流産”を引き起こしたほか、“色素沈着の見られる赤ちゃん”が生まれた。

“黒い赤ちゃん”の誕生は世間に衝撃を与え、仕事や結婚への影響を恐れ、多くの人が被害を隠したまま今に至る。

しかし発覚から半世紀が過ぎた今、次世代からも健康被害を訴える声が上がっており、国は2021年(令和3年)に次世代健康影響調査に着手した。

“受精卵時からのダイオキシン曝露”を調べた研究は世界でもなく、今回が初めての調査となる

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カネミ油症事件から55年 次世代健康調査 公表を前に

第1回:「産んで欲しくなかった」次世代が抱く恐怖と差別 “黒い赤ちゃん”として生まれた子どもたち
第2回:「恨む お母さんが油を食べていなければ」先生からも石を投げられ…差別恐れ 口つぐむ被害者

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