「もともとは役所の事務職員として入った」
すっかり熟練の職人の風情を醸し出す藤田さんですが、実は多可町役場に勤める職員なのです。
(藤田尚志さん)
「もともと役所の職員として、事務職員として入りまして、(人事異動の)希望の中に杉原紙を作ってみたいなーと、ある意味軽い気持ちで書いたら、それが上の人の目に留まって、じゃあやってみるかと」
安価な海外の紙に押され、杉原紙作りの職人がいなくなる中、伝統産業を途絶えさせまいと町では約50年前から職員を登用してきました。
(藤田尚志さん)
「一時はちょっと、僕向いているのかなあと悩んだ時期もあったんですけども。トータルで見たら、役場で事務仕事をしていた時よりも充実しているなというのは感じています」
伝統産業に従事する人は年々減っています。一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会によりますと、1974年に28万288人いた従事者は、2020年には5万4265人に。後継者不足は全国的な課題となっています。多可町も例外ではなく、藤田さんに続く職人を育成するため非常勤の職員を募集し、すでに4人の女性が職人デビューしています。
(元アパレル販売員 松田和美さん)
「美術とかデザインとかそういうことが好きだったので。工作とかも好きだったので、ちょっと手作業やってみたかった」
(多可町商工観光課 課長・金高竜幸さん)
「民間ではなかなか収益化につながらない場合はまた途絶えてしまうおそれもあるので、町としてはそれを守っていく」