防水テープの貼り替え作業では、テープを貼って160℃の高熱プレスをかけ、その直後に冷却することでテントシートに定着させます。そうすることで、防水テープが剥がれていた部分もまるで新品のように生まれ変わりました。

地道な作業を一人で黙々とこなしていく小暮さんは、自らの仕事を「アウトドアの総合病院」だと表現します。

【北条工房 小暮裕一さん】
「病院の患者さんと一緒で、テントも一つ一つ違うし、劣化の仕方も違うし、直し方も違うし…」

工房の奥には、大きく広げられたテントがいくつも吊るされています。はっ水剤を吹きかけて乾燥させる工程を繰り返し、雨への耐久性を強化します。中には、20年以上使われているビンテージもののテントもあるということです。

修理の依頼はすべてメールで対応しています。思い入れのあるテントを直そうと、藁にもすがる思いで修理の相談をするお客さんは少なくないそうです。

【北条工房 小暮裕一さん】
「捨てるも同然だったテントが生き返って、もう我慢できずにすぐに張りに行ったお客さんから画像をもらったりね。なんかね、そうやって画像付きで来るとうれしい」

お客からの感謝の言葉が何よりのやりがいだという小暮さん。キャンプブームの中で、テントを購入する人にはテントに愛着を持って欲しいと呼びかけます。

【北条工房 小暮裕一さん】
「捨てられるテントがあるということが一番悲しいことであって、古いテントでも大事に使おうと、思い出の詰まったテントを大事に使おうと、そういう意識が皆さんにもっともっと芽生えてくれれば」

捨てられるテントを一つでも減らすために、小暮さんはこれからも修理を続けます。