「大地震の日に陣痛がきた」「でも産むんだ」

由梨さんはあの日の体験を日記に残していました。
【由梨さんの日記より】
「なんてことだ。大地震の日に陣痛がきた」
このひとことから始まる出産記録は、びっしり6ページ。地震は入院後、病室にいる時に起きました。
【由梨さんの日記より】
「突然、病院がぐわんぐわんと揺れ出す。1人取り残され、ベッドにしがみつく。皆少し揺れるゆたびに、顔が青ざめ、表情がこわばる」

真っ暗な分べん室で陣痛に耐えながらお腹の赤ちゃんが無事かどうかもわからない。極限の精神状態の中、こう決意を記していました。
【由梨さんの日記より】
「あの地震はかなり平常心を失わせた。そしてやりきれない思いがあふれ、泣いた。でも産むんだ、産むしかないってがんばった」

宮城には由梨さんの両親が住んでいます。夜通し娘のそばにいた由美子さん(67)は、あの特別な夜をいまも鮮明に覚えています。
(由梨さんの母・由美子さん)
「電源が落ちて、助産師さんが持っているのはポータブル(携帯用)の心音計、赤ちゃんの心臓の音がきこえるものだけなんです。わたしも懐中電灯係で分べん室に入って」
誰もが必死でした。通常の医療体制とは全く違う環境の中、歓汰くんが生まれたのは入院から約17時間後でした。
(由梨さんの母・由美子さん)
「無事、生まれてよかった。産声をきくとホッとしましたね」














