岸田総理「宏池会の本質は『現実的な選択』」

では、岸田総理の考える宏池会の姿とは何なのか。2012年に会長に就任後、おそらく初めて自身のビジョンを示したのが、2015年に富士急ハイランドリゾートで行われた派閥研修会の場だった。岸田総理にとっての宏池会像、そして「保守本流」がここではっきりと語られているので、少し長いが引用する。

岸田派パーティー、古賀と岸田

岸田宏池会会長(2015年10月5日派閥研修会にて)
「私自身が『宏池会の基本理念は軽武装、経済重視だ』と言った、という記述が(新聞記事に)ありますが、それは間違いであります。確かに政策として軽武装、経済重視、こういった政策を宏池会は大事にしてきましたが、私はそれは本質でないと思っています。私たち宏池会の政策の本質は特定の考え方、なんとか主義とかいわれるような思想ですとか、特定のイデオロギーにとらわれることなく、その時代時代において国民が何を求めているか、日本にとって何が大事であるのか、極めて政治をリアルに考えて、具体的に政策を打ち出していった、こうした政策に対する現実的な、具体的な姿勢、これが宏池会の政策の本質であると思っています。結果としてその時代において宏池会として、軽武装であったり経済重視であったり、あるいは積極財政だったり、そうした政策が打ち出されてきた、これが本質であるという風に思っています」
「(新聞記事で)宏池会は絶滅危惧種などと言われているわけでありますが、生き残るものは力の強いものでなく、時代の変化にしっかり対応できたものであるというのはダーウィンの進化論においても基本的な考え方であります。私たちはしっかりと時代の変化に対応しながら基本的な考え方を守っていく、こういった姿勢が大切なのではと思いますし、それができたからこそ、自民党の中で唯一、58年間にわたって長く宏池会の看板を守ることができているのではないか」

つまり、特定の思想やイデオロギーにとらわれず、課題解決のために現実的な選択を積み重ねていくのが「保守本流」であるという立場だ。必要であれば憲法改正もいとわない。

実際、関係者によると、自民党の政調会長だった2019年には周囲にこうも語っていたという。

岸田政調会長(2019年当時、周囲に対して)
「具体的に言えば、環境権の問題であったり、選択的夫婦別姓の問題であったり、同性婚の問題であったり、いま目の前にある問題に目を向け、課題解決のために必要であれば、憲法改正を行う。この考え方に基づけば、憲法9条に自衛隊を明記することは何一つ問題がない。自衛隊をめぐる違憲論争に終止符を打つために必要な改正であれば、地方政調会などの機会を通じて、国民の声に耳を傾け、丁寧に説明していくことが必要だと思う」