「妊娠したら解雇」実習生の女性“4人に1人”が経験
日本では、妊娠・出産を理由に女性を解雇したり不利益を強いたりすることは違法で、これは外国人労働者であっても変わらない。しかし、出入国在留管理庁の調査によると、外国人技能実習生の女性の4人に1人が「妊娠したら仕事を辞めてもらう」などと言われた経験があるという。2020年までの3年間で妊娠・出産を理由に技能実習が困難になった事例は637人に上る。アインさんから相談を受けたNPO法人の代表は、受け入れ側も実習生に対し正しい情報を伝えることが必要だと話す。

「帰国させられることを恐れて中絶の道を選んだ実習生もいます。妊娠、イコール間違ったことをしてしまった、と考える人は少なくありません。実習生を“安価な労働力”として見るのではなく“ひとりの人”として支援することが必要です」(NPO「日越ともいき支援会」吉水慈豊代表)
孤立出産の末、遺体を“33時間”置き「有罪」
妊娠した事実を打ち明けられずに死産し、罪に問われている実習生もいる。熊本の農家で働いていたベトナム国籍のレー・ティ・トゥイ・リン被告(24)。妊娠を周りに相談することはなく、病院にも一度も行ってなかった。2020年11月、一晩中「家が壊れるほどの激痛」に何度も見舞われながら、自宅でひとり双子の赤ちゃんを死産した。「血まみれのマットレスの上に子どもたちを置いておけない」。遺体をタオルで包み、段ボール箱に入れて棚に置いた。赤ちゃんは男の子。ベトナム語で「強くたくましく」などの願いを込めて「コイ」「クオイ」と名付けた。
リン被告が書いた手紙
「双子の赤ちゃんごめんね。天国で安らかに眠ってください」

翌日訪れた病院で、死産を打ち明けた。すると医師に通報され、死体遺棄の罪で逮捕・起訴された。死産から約33時間、遺体を自宅に置いていたことが罪に問われたのだ。
「絶対に子どもたちの体を傷つけたり、捨てたり、隠したりしていません。精神的にも肉体的にも非常に苦しい中、できる限りのことをしました」(リン被告)

リン被告側は「後で埋葬するつもりだった」と一貫して無罪を主張している。一審の熊本地裁は懲役8か月・執行猶予3年の有罪。二審の福岡高裁は、遺体を置いていたのは短時間で「放置していたとは言えない」として一審判決を破棄したが懲役3か月・執行猶予2年を言い渡した。弁護側は最高裁に上告した。