「自粛を自粛する」をスローガンに掲げ様々なイベントを仕掛ける

―――被災者を励ますためにほかにどのようなことをされたのですか?
 写真展や瀬戸物市、そして気持ちを明るくしなければと思い、落語や漫才をしました。「食」だけじゃないことにも積極的に取り組みましたね。とにかく気持ちを明るくしていかないとと思い、スローガンとして「自粛を自粛する」を掲げてね。南京町は外国人の多い街なので、日本のマインドじゃなくて「やるぜー!」みたいな感じで自粛を自粛させていただきました。

―――阪神・淡路大震災を経験して人生観や考え方に変化はありましたか?
 老祥記には、地震の前には既に多くのお客さんに来ていただいていて、私自身はちょっと天狗になっていたんですよね。それが地震から2週間後に店を再開した時に、お客さんから「本当にうれしい、おいしい」だとか「また豚饅頭を食べさせていただける」という言葉をたくさん頂いて、私自身「本当に商売を甘くみていたな」と思いました。その時から商売に対する考え方が完全に変わりましたね。

―――のちに東日本大震災の被災地支援にボランティアで入られていますよね?
 東北で大きな被害があったので「何かしなければいけない」と強い思いがあって支援に向かいました。それからは毎年、被災地と交流がありますし、そのあとに地震があった熊本の支援もずっと続けています。それが縁で絆ができるんですよね。震災はつらいですけど、新たな絆は震災がなかったらできていなかったんですよね。去年11月には、新型コロナウイルスの影響で縮小していた「KOBE豚饅サミット」を本来の規模で開いたのですが、熊本の店舗が参加しました。もちろん一番良いのは、支援の必要ない世の中になることですけどね。