しかし修理に欠かせない部品は、手に入りにくくなっています。

「次に発注しようとしても「もう作っていませんよ」とか、そういうのが結構あるんですよね」
(真空管は?)「オーディオ用の玉は中国や特定のものを作っている場所はあります。ただ、ラジオ用のものは、一切ありません。作っていないですから、例えば秋葉原の電気街の中にストックがあるとか、あるいは個人的にコレクションで持っている方から分けていただくとか」

飯田市の隣、阿智村の東山道・園原ビジターセンター「はゝき木館」。
ここでは、勝野さんが修理した真空管ラジオを販売しています。

館内のBGMも、勝野さん自作の真空管アンプで演奏。
訪れた人は…。「古い感じがしてまたいいですね。音も柔らかいかな」
販売価格は2万円前後から6万円台。
5年前から過去2回、展示販売を行っていて2か月間でおよそ30台が売れたことも。
(はゝき木館・新井里美さん)「みなさん『うわー、すてき』って感じで、すごく懐かしいという人もいたり『ブルートゥースも入ってるの?』みたいな感じでとても喜ばれています。割と若い子も好きみたいでじっと見て悩みながら『自分のお小遣いの中で買えるかな、どうなのかな』みたいな感じで悩んで」
お気に入りの音楽も聴ける「進化した」真空管ラジオは、若い世代をも魅了しています。

(真空管ラジオ再生工房・勝野薫さん)「このラジオはほとんどの方は「懐かしい」と表現される。若い人が見ると、「やばい」と言う。やばいというのは最高の誉め言葉だと私は理解している」
若いお客さんの1人が、愛知県の中学1年の女の子。

今年届いた年賀状には「真空管、とても素敵で気に入っています」とのメッセージが。
(勝野さん)「中学1年生の女の子がこのラジオの前で固まっちゃって、お母さんにおねだりして「どうしてもこれが欲しい」と。そういうのを見ていると、ラジオを作ってよかったな、やりがいがあるなというのを感じる」
勝野さんは、通信販売を行っていません。
対面販売にこだわるのは、「手塩にかけたラジオを大切にしてくれる人へ」との思いからです。

「自分の子どもと同じくらいかわいいんですよ。いろいろな所へ持っていって販売するとお客さんに気に入っていただいて、買っていただける。そういう方と交流することがもう本当に楽しみです」

半世紀、それ以上の時を経てよみがえる優しい音。
勝野さんが手塩にかけて修理した真空管ラジオは、今年9月2日から10月29日の2か月間、阿智村「はゝき木館」で展示販売されるほか、各地のイベントでも販売されます。