様々な芸術や文化で溢れるウクライナですが、この1年間で1200を超える美術館や文化財などが攻撃を受けました。私たちの取材に応じたウクライナのトカチェンコ文化相が「これは文化への虐殺行為だ」と訴えました。世界的なバレエの名門・ウクライナ国立バレエは、戦時下でも活動を続けていました。23日の公演には「平和への祈り」が込められていました。

文化大臣「文化に対する虐殺行為」 被害を受けた文化財は1271

侵攻から1年が経った、2月24日。
首都・キーウ中心部にあるウクライナ国立歌劇場で、平和を祈るオペラが響き渡りました。

「私たちに与えてください 長い 長い 命を」

戦時下にあっても、歌声は美しく、芸術を楽しむ人々の姿がありました。

オペラを観劇した人
「言葉では言い表せません。一緒に歌って、生きて、国を愛して」

豊かな自然に恵まれたウクライナ。
何千年と続く歴史の中で、様々な文化や芸術が受け継がれてきました。

しかし、被害を受けた博物館や美術館、文化財の数は1271のぼっています。

2月24日に、ウクライナのトカチェンコ文化相から話を聞くことができました。

――1年を振り返って、どのような思いでいますか?

トカチェンコ文化相
「ウクライナは多くのものを失いました。そこには多くの建物や文化遺産もあります。この1年、重要な結果は、我々は持ちこたえたということ。“自由の国民”として」

トカチェンコ文化相は、被災した美術館などにたびたび足を運んでいます。

――被災した建物をご覧になって、どんな思いがありましたか?

トカチェンコ文化相
「悪夢のようでした。建物が意図的に攻撃されました。15、16世紀の建物が壊されていくのをみると、どんなに修復しても元には戻らないと痛感します。これは戦争犯罪です。ウクライナのアイデンティティに対する意図的な戦争なのです」

「もう1つ伝えたいことがあります。占領されたウクライナの地域を奪還した後、私たちは“文化に対する虐殺行為”を確認しました」

ロシアの支配が続くマリウポリでは、2000以上の美術品などが親ロシア派地域に持ち去られたと指摘されています。

トカチェンコ文化相
「図書館からはウクライナ語の本が捨てられ、学校ではロシア語で歴史を教えていました。これがロシアの戦争のやり方です」

文化への攻撃は、ウクライナ国民にある変化をもたらしました。

トカチェンコ文化相
「世論調査で、戦争中に文化施設を訪れた人や文化イベントで参加した人々が増えたことがわかりました。この意外な結果が、どれほど人々にとって文化が重要なのかを表しています。それは人々の安らぎであり、美しき世界への扉なのです」