戦時下で踊る名門バレエ団のトップを務める日本人 「今の団員と新しい時代を」

世界的なバレエの名門・ウクライナ国立バレエ。
侵攻直後、拠点の劇場が閉鎖され、“踊る機会”を失いました。

戦争の犠牲になったダンサーもいます。
2013年に国民栄誉賞を受賞したオレクサンダー・シャポヴァルさん(48)は志願兵として戦地に行き、ロシアの攻撃を受けて亡くなりました。
バレエ団はいま、公演数を週2回に減らし、活動を続けています。
そのバレエ団のトップ(芸術監督)を日本人の寺田宜弘さんが務めています。
寺田さんも、かつてはこの舞台で踊っていました。

芸術監督 寺田宜弘さん
「世界を代表するキーウのバレエ団の芸術監督になることは、必ず、100%、今の団員たちと新しい時代を作っていかないといけない」
しかし、今のウクライナは本番中に警報が発令され、公演が中断されることも。

芸術監督 寺田宜弘さん
「400人から500人の人たちが、サイレンの間は地下に避難することができます」
こうした不安な状況が長く続き、「心のサポート」が今の課題です。
芸術監督 寺田宜弘さん
「私としては朝、一番最初に劇場に来る。帰るのは一番最後に帰る。できるだけ全ての団員たちに、『君たちがいないと、この劇場は活動をすることができない』、『君たちのおかげで劇場がある、ウクライナの芸術がある』と」

侵攻から1年を前にした2月23日、バレエ公演が行われました。

タチアナ・ロゾヴァさん
「(警報が鳴った)あの時は最後までやりきりました。今日も最後までやりきりますよ」
「銃は撃てないけど、私は踊れる。そして文化を届ける」
この日、上演されたのは「森の詩」。
バレエを観劇した人
「このような時期に、まるで別世界の場所に来られて嬉しく思います」
「今日はとても満たされました。また以前のように生きて、喜んで、悲しんだりもして…」
寺田さんが「森の詩」を選んだのは、こんな想いがありました。

芸術監督 寺田宜弘さん
「最後の雪の場面で、真ん中に白樺の木が立っている。それで最後はまた春が来て、小さな男の子が笛を吹いて、白樺が大きくなる。新しい命が生まれるという意味。戦争で亡くなった人もたくさんいる中で、必ず新しい命がこの国で生まれていく(というメッセージを込めて)」


