大阪マラソン2023は世界陸上ブダペスト大会選考会を兼ね、2月26日、大阪府庁前をスタートし、大阪城公園内にフィニッシュする42.195kmのコースで行われた。

男子はハイレマリアム・キロス(26、エチオピア)が最後の競り合いを制して2時間06分01秒の大会新で優勝。西山和弥(24、トヨタ自動車)が2時間06分45秒の初マラソン日本最高タイムで日本人トップの6位に入った。日本人2位にも初マラソンの池田耀平(24、Kao)が続いた。日本人3位の大塚祥平(九電工・28)までが2時間6分台と好タイムが続出した。

西山、池田に加え11位の吉岡幸輝(26、中央発條)、13位の作田将希(26、JR東日本)ら9選手が、10月開催のMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ、パリ五輪代表3枠のうち2人が決定)出場権を新たに獲得した。

女子はヘレン・トラ・ベケレ(28、エチオピア)が2時間22分16秒の大会新で優勝。渡邉桃子(24、天満屋)が2時間23分08秒で日本人トップの3位に。渡邉と5位の西田美咲(31、エディオン)の2人がMGC出場資格を獲得した。

西山は給水を池田に手渡した後にペースアップ

初マラソン日本最高記録は、西山と池田のライバル関係がレース中も発揮された結果だった。
2人は同学年で、箱根駅伝ではともに区間賞(区間日本人最高)の活躍をした。昨年9月には英国のハーフマラソンに一緒に遠征し、親しく話すようになった。
30km以降の展開を西山が次のように振り返った。

「同学年の山口(武)選手(西鉄)がまず攻め上がっていって、僕はちょっと後ろで様子を見ていたのですが、32kmを過ぎて上りから下りに変わったところで今度は、池田選手が攻め上がって行った。ここは勝負どころだな、と思いました。池田選手も同学年で初マラソンだったので、35kmから苦しいと言われていますが、失うものはなにもないと、思い切って攻め上がりました」

しかし2人の関係は、バチバチと火花を散らすだけではなかった。35km過ぎの給水では、西山が首からかけた2つのボトルを池田に手渡すシーンがあった。

「スペシャルドリンクを池田が取り損ねたのを見て、横まで追いついていって、給水を池田に渡して、一緒に6分台を出そうということで、少しペースアップをして行きました」

池田もライバルと共闘する思いは一緒だった。32km過ぎの外国勢のペースアップに西山が付いたところは、「西山と行こう。初マラソンだからチャレンジできる」と腹をくくった。

そして35kmの給水で西山がペースアップしたときは「まだ余裕があるかな。西山の後ろで力を借りて、楽になったところで仕掛けよう」と勝機をうかがっていた。
しかし「38kmで急激にキツくなって、後ろに食い下がるのが精一杯」になった。40kmを過ぎて西山に引き離されてしまった。
フィニッシュで8秒差がついたが、2人とも昨年の今大会で優勝した星岳(24、コニカミノルタ)がマークした初マラソン日本最高(2時間07分31秒)を大きく上回った。2人の快走の背景を、日本陸連の高岡寿成シニアディレクターは以下のように話した。

「同世代の選手の成功を間近で見て、努力すれば自分もそこに到達できると実感できます。初めてでも、2回目でも。また、知らないことのプラスも生じていると思います。ワクワクしてマラソンに臨むことができている」

陸連・瀬古利彦リーダーもその意見に同意する。
「先頭集団に同じ学年の選手がいて、勇気づけられた部分があったと思います。昨年のこの大会で星君が初マラソン日本最高を出しましたが、(駅伝やトラックで)彼以上の力を示している選手は多くいる。今年の別大でもマラソン2回目の横田(俊吾・青学大4年)君が学生記録(2時間07分47秒)を出した。初マラソンや2回目の選手が怖い物知らずで行けています」

初マラソン歴代リスト上位10人の年齢を見ると、23~24歳の選手が7人を占めている。その全員が21年以降に走った記録である。昨年の別大優勝の西山雄介(28、トヨタ自動車)のように、トラックや駅伝で自分の決めたレベルに達してから、という選手ももちろんいていい。
だが、大学を卒業して1~2年目の選手がマラソンに進出する流れができてきた。