裁判で証拠認定された「19枚のネガ」帰り道に行きの“フリ”して撮影?

2回目の再審請求では、弁護団の求めの甲斐あって、検察側から大量の証拠開示があったという。その中に、無期懲役とした判決を揺るがす重大な事実が含まれていることが判明したのだ。それが、「引当捜査のフィルムネガ」だった。

 引当捜査とは、容疑者を現場に立ち会わせ、事件現場まで捜査員の誘導無しで案内できるかを確かめるもの。「日野町事件」では、有罪判決の決め手の1つとして、阪原さんが警察官の誘導無しに金庫が捨ててあった場所まで案内できたとされている。

ところが、引き当て捜査の際に警察官を案内する様子を写したとされる証拠写真と、新たに開示されたフィルムネガの順番を突き合わせたところ、19枚中8枚が「帰り道に行きの“フリ”をして撮影された」ことが分かったのだ。弁護側は「警察官が、行きの写真だけでは証明が不十分だと考え、写真を差し替えて任意に案内できたとする虚偽の証拠を作成したのではないか」と指摘している。

 引当捜査を担当した元警察官は、再審請求の審理の中で「行きと帰りの写真が混在して、その中から選んだ」と述べたという。

大津地裁は「再審開始」を決定…検察が抗告

2018年7月、大津地裁は再審開始を決定。大津地裁は、先の引当捜査について、「発見場所にたどり着けることを強く期待した警察官が、意図的な断片情報の提供を行ったことなどで案内できた可能性が認められる」と判断した。阪原さんが逮捕されてから、約30年が経っていた。

この決定の6日後、検察側は即時抗告(不服申し立て)を申し立て、舞台は大阪高裁へと進んだ。