2月21日行われた年次教書演説で改めてロシアの正当性を述べたプーチン大統領。
1時間45分の演説は一方的な主張だった。ネオナチからウクライナを守るために軍事作戦を断行したと述べたのは冒頭だけ。その後は、戦争を始めたのは西側で、ロシアはロシア人の命を守るために防衛のための戦いをしていると繰り返した。また、経済制裁の影響は全くない。ロシアを戦争で負かすことはできない、など国内向けのアピールに終始したものだった。会場に集まった“プーチン側”の人間たちは一様に頷いていたが、侵攻以来ロシア兵の死者は30万人とも言われる中、ロシア国内で批判が表立ってはいない。
プーチンはロシア内部の不満から揺らぐことはないのか…番組ではロシアの一般市民の実情に目を向けた。すると1年前の軍事侵攻以降取り立てて厳しくなったものがある。情報と言論の統制だ。

二つの“特別軍事作戦” ひとつはウクライナで…もうひとつはロシア国内で…

モスクワ市内でウクライナ戦争に対する賛否を聞くと、賛成半分、“答えられない”半分。批判的な意見は拾えなかった。これが現在のロシアの“雰囲気”だ。心の中では様々な意見が有るに違いない。番組では一人のロシア人弁護士から話を聞くことができた。
SNSに反戦の投稿をした友人が刑務所に入れられたと話す彼自身、特別軍事作戦を非難したことで、去年スパイを意味する『外国代理人』に指定された。2月には弁護士資格を3年間停止されている。

弁護士 ミハイル・ベニヤシュ氏
「ロシアは以前とは別の国になった。もっと言うと二つの特別軍事作戦が行われている。ひとつはウクライナで…。もうひとつは言論統制という形でロシア国内で…。ウクライナで起きていることに反対しているすべての人には長い懲役という判決が下される」
「反戦活動で7年半から8年の懲役。政権は異常なくらい攻撃的になった。私たちは内戦間際だと思う。大きな悲劇だ。ウクライナ国民はウクライナ軍に守られているが、ロシア国民を守ってくれる人はいない

言論統制を歓迎する人はいない。かつて「プーチン偉いぞ」と言っていたタクシードライバーが今は悪口しか言わなくなったとベニヤシュ氏は言う。

弁護士 ミハイル・ベニヤシュ氏
「1対1だと『プーチンは酷いね』という人もオープンには言わない。政府は1年かけて国民をシステマティックに脅迫した。恐れる人の中には出国した人もいる。残った人は自分の家で震えている。ロシア社会はバラバラになり、国民としての意思がとても低い」

防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長
「しばらくロシアに行ってないので空気感が分からない部分もありますが…。開戦前にロシアもそこそこ言論統制はありました。が、この1年で桁違いに強まって、閉塞感が漂っているんです」
「若い人ほどSNSを使うとか、外国に行き来をするとか外の情報、空気に接している。そういう人たちからするとどんどん高まってくる情報(言論)統制っていうのは居心地が悪い…」