「アマミノクロウサギ」を救え! 奄美大島での取り組み

貴重な原生林が多く残り、広大なマングローブ林を抱えた奄美大島は2021年に世界自然遺産に登録されました。

国土の0.2%にも満たないこの島には、日本国内に生息する約3万8000種のうち5083種(約13%)が住み、環境省指定の絶滅危惧種は76種確認されています。

中でも「生きた化石」とも言われる、世界的にも貴重な生き物がいます。

一度の出産で1~2頭の赤ちゃんを産む 繁殖能力は決して高くない

奄美大島と徳之島だけに住む固有種、アマミノクロウサギです。ウサギの特徴の長い耳はなく、ジャンプをすることもできません。

ウサギの中でも最も原始的な形態を残しているために「生きた化石」と呼ばれています。

ところが、人間が持ち込んだマングースや島の開発による環境破壊などで数は激減し絶滅危惧種に指定されます。

さらに追い打ちをかけたのがネコでした。

ネコは自分と同じぐらいの大きさでも狩ることができる

人に飼われていたネコが野生化し襲っていたのです。

奄美市・世界自然遺産課 平田博行課長
「ネコは元々この奄美大島にはいなかったんですが、ネズミ対策などで連れてこられたネコが増えていったと思われます」

奄美大島には元々、肉食の哺乳類が存在せず、島の生き物はネコから逃げる能力を持っていません。

そのため、ネコに一方的に捕食されてしまい、アマミノクロウサギの推定個体数は、2003年には約2300頭にまで減りました。

そこで、奄美大島ではネコから野生動物を守るための「ノネコ管理計画」を2018年から実施しました。

捕獲器を設置する職員 中にはネコの餌が入っている

管理計画では、野外にいるネコを減らすために、森林や市街地に捕獲器を設置。捕まえたネコはそのまま保護され譲渡人を探すことになります。

また、野外にネコが増えないよう、飼いネコについては室内飼いを推奨し、マイクロチップの装着と屋外に出す場合は不妊去勢を義務化しました。

そして飼いネコの不妊去勢手術代の一部助成を行うなど、かなり先進的な取り組みとなっています。

マングースの駆除のみが行われていた2003年~2018年の15年間で増えたクロウサギの数は約11000頭ですが、ノネコ管理計画が始まった2018年~2021年の3年間では約6400頭と、大幅に増加しました。

しかし、計画が発表された当時は「ネコを殺処分するための計画」と批判が殺到したといいます。

批判の電話は殺到したが、ネコを引き取るといった電話はわずかだったという

奄美市・世界自然遺産課 平田博行課長
「殺処分ありきでやってる計画ではなく、捕獲したネコの譲渡活動も並行して行っています。しかし、いくら説明しても違う意味で解釈されて、業務に支障が出るぐらい、批判の電話が殺到しました。職員も精神的に不安定になったりしました。」

捕獲されたネコは1週間以内に譲渡人が見つからなければ安楽死となりますが、地元の獣医師や団体などと連携し譲渡活動を行い、今までに殺処分されたネコは0匹です。

奄美市・世界自然遺産課 平田博行課長
「奄美大島の生態系を守るため、そして不幸なネコ(野良ネコなど)を増やさないための計画だと理解していただいて、ネコの譲渡や預かりにご協力いただければと思うところです」