「気球であれば見逃されるだろう」

黒井文太郎さん: 今は衛星であったり偵察機の時代ですよね。その後、気球をスパイに使ったのは1950年代の話です。1956年にアメリカが500ぐらい一度に西ドイツやトルコから飛ばしてソ連の上空を飛んだことあるんですけれども、回収できたのは約1割で、半分ぐらいしか写真が撮れなかったんですね。そのためすぐ偵察機の時代に入りましたね。

―――では今どうして気球をまた使っているのか。

 衛星に比べると高度低いですから、情報を集める可能性はあると思います。しかし、領空侵犯をしてしまうと大きな国際問題になりますので、偵察機を飛ばせないということで、気球であれば見逃されるだろうということが大きいと思います。

 気球はゆっくり長い間滞在できるというメリットはあるんです。ただ衛星だと狙ったところに軌道を変えながら計算して誘導できるんです。しかし気球ですと、今回は操縦装置がついてますが、なかなか難しいですね。

―――サウスカロライナ州で撃墜された気球の飛行ルートなんですが、中国から漂ってカナダを通りアメリカに行った、これは気流に乗っていただけとみられるのでしょうか。

 アメリカの有力紙(ワシントンポスト)がアメリカの情報機関の内部情報を報道したんですが、それによるとこのコースは、中国は意図してなかったようですね。本来であれば東の方に抜けていってアメリカのグアム、ハワイの軍事基地のあたりに飛ばしたかったのが、気流の関係で行ってしまったということらしいです。

 たまたまアメリカ本土のICBMの上空に来たんで、そこに滞在してたまたまそういう情報を取ろうという工作をしたみたいです。