ロシアがウクライナに侵攻して1年。ロシア側から見る今回の戦争を、“プーチンの頭脳”ともいわれる極右思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏が日本のメディアに初めて語った。3回シリーズの最終回は、特別軍事作戦はどのように終わりうるのか、今後の展望やロシアから見る日本について聞いた。(前編中編を読む)

「プーチンは長くて激しい戦争に準備をしていなかった」

ーー特別軍事作戦はプーチンの判断だったと伺ったが、地域限定の作戦ではなく、欧米との長い戦いになることをプーチンが最初から分かっていたのでしょうか?

分かりません。すぐに終わると期待していたのではないかと思うこともあります。プーチンはこの軍事作戦の意味を理解していたが、技術的なディテールに関しては信頼していた特定の人物に頼ったのに、期待外れだったのです。プーチンは彼らを処分しなかった。このような危機的な状況下で期待外れとなった人や任務を果たさなかった人にしっかり罰を与えるべきです。
 
そういった処分はなかった。プーチンは明らかに失望させられたし、誰が期待外れだったのかも明らかである。プーチンはそれを認識はしたが、処分はしなかった。辞職した人、首になった人、それまでの地位にいる人もいます。プーチンは長くて激しい戦争に準備をしていなかったと私は思います。

「ロシアが勝利するか、人類滅亡になるかの2択」未来を決めるポイントとは

ーー期待外れとなったのは誰でしたか?

これは国内のマターなので海外のメディアには答えません。

ーープーチンは「雨の王様」だと仰っていたと海外のメディアが伝えて
いるが、どうでしょうか?

 
私は海外のメディアに対してそういった話をしていないのでこれはプロパガンダです。ウクライナのプロパガンダのフェイクニュースです。

ーー特別軍事作戦はいつ終わるのか、どのように終わるのかご意見を伺いたいです。
 
どのように終わるのかということならお答えできます。しかしその前にイントロダクションが必要です。歴史とは自由なものです。歴史は機械的に動くものではないので、「明日は~が起きる」と言えば、その時点で誤りが発生します。

歴史は人類の一つ一つの判断によって形成されます。その(判断の)集合体は歴史となります。歴史はオープンなものなので、物理的なものと同じように未来をプログラミングしようとするのは正しくありません。

今後はどうなるのか、いつになるのかと聞かれると、これはオープンな問題で、私、あなた、一人一人の日本人、韓国人、フランス人、ハンガリー人、アルゼンチン人、ナイジェリア人、サウジアラビアの人やエジプト人(の活動)によって決まってきます。ロシア人、ウクライナ人、ポーランド人、ベラルーシ人、もちろんアメリカ人によって決まってきます。しかしアメリカ人だけが決める、グローバルなエリートだけが(将来を)決めるということではありません。
 
歴史は全人類によって形成されるものです。一人一人の判断は歴史を形成します。私は未来の特定のポイントにだけ言及します。

第一、ロシアはこの戦争で負けることはないということを理解しないといけません。クリミアや4つの新しい地域だけを失うだけではなく、自分自身を失うからです。ロシアのすべての人がそれを分かっています。
 
勝利の定義はまた別の問題です。4つの地域、7つの地域で形成されたノヴォロシア、ウクライナ全土になるのか、これはまだ未解決の問題です。しかしロシアの勝利は最低の条件で、最低限の勝利は絶対的です。その勝利のためにロシアはいくらでも、どんな相手とでも戦います。
 
大祖国戦争と同じです。ドイツ軍がモスクワに近づいたし犠牲者が多いので降伏しましょう、というパターンもあった。しかし自分が目指したことを達成するまであきらめないというのはロシア国民の本質であり、それを証明する事例が歴史の中にたくさんあります。
 
全世界と戦わないといけないとしても、核兵器を使う必要があるとしても、ロシアは勝利するまでは止まりません。勝利するまでにかかる時間は私には分かりません。
 
ロシアのあきらめない本質、客観的にも主観的にも、政治敵、心理的、歴史的、地政学的な観点からしても止まることが出来ないと欧米が理解していれば、人類滅亡だけがロシアを止める唯一の手段であることを分かっていたはずです。
 
我々を止める唯一の手段は戦略的核兵器であるが、そうすれば我々は同じ手(戦略的核兵器)を使います。プーチンはこのことについて何度も話したし、そうなる可能性は高いです。
 
これはプロパガンダではありません。未来は上記の通りです。我々は勝利し、勝利の後に世界各国が我々に対して今後の方針、つまり制裁を導入するか仲良くするか、圧力をかけ続けるか、圧力を止めるのか、現状を受け入れるのか、ということを決めるが、これはあくまでも我々が勝利をしてからです。
 
勝利するまで我々は止まることも後退することもありません。後ろに一歩下がったら、100歩も下がるのでロシアが滅亡します。ロシア国民も大統領もそれを理解していますのでこれで十分です。しかも国民は徐々に戦闘に参加するようになった。

新しい地域の市民は武器を手に取りました。彼らはよその人ではなく、ロシア国民であり、武器を手に取った彼らは勝利を逃さないようにします。

(ロシアが)勝利するか、人類滅亡になるかの2択です。3つ目のシナリオはありません。勝利する以前の平和はありえません。(ロシアの)勝利そのものが平和です。ロシアが勝利してから、平和になります。ロシアが勝利しなければ、終末の日(最後の審判)が訪れます。
 
上記は未来を決める条件です。次に、時間はどれぐらいかかるのか、という質問です。我々は核の危機の可能性も視野に入れているが、それは一瞬で起きます。我々はこの戦争を1年、2年続ける可能性もあるが、西側が極端な手段をとれば、ロシアも極端な手段で対抗することになります。
 
我々は勝利しなければ止まることがないのでこの戦争はいつまでたっても続く可能性もあるが、人類滅亡であっという間に終わる可能性もあります。
 
西側がロシアかベラルーシに対して戦略核兵器、戦術核兵器を使えば、もうおしまいです。この紛争は他の国でも展開される可能性があるし、NATO諸国が直接参加する可能性もあります。そうなったら当然(終わる)時期が変わってきます。NATOに武器供与を受けるウクライナの軍と戦うのとNATOと戦うのとは差が大きいからです。
 
NATO諸国が直接参加すれば状況が緊迫化し終末の日が早まります。もしくは戦争は長引くが、いずれはロシアが勝利します。その場合、多大な犠牲を払うのは我々だけではありません。
 
ロシアの条件に基づいていない平和の可能性を冷静な分析から排除すべきです。これはあり得ません。ロシアの人は残酷で攻撃的だからではなく、(戦争は)もう始まったので後戻りが出来ないからです。先に進むしかありません。
 
勝利すれば、多極世界が形成され平和もしくは停戦になる可能性があります。しかしどこかの段階で異常が発生すれば、人類は滅亡します。