3年ぶりの熊本城マラソンまであと5日。参加者の中から競技用の義足で挑戦を続ける女性ランナーの思いに迫ります。
競技用の義足をはく女性。熊本市南区の横田 久世(よこた ひさよ)さん(45)です。

横田さんは義足で走り続ける理由をこう語ります。
横田久世さん「自分が病気になったことを絶対悪いものにしたくないと思って退院したので、私が挑戦することは自分との約束」

横田さんは27歳のときに夫・潤(じゅん)さんと結婚。その後、2人の娘に恵まれ笑顔がたえない毎日を送ってきました。しかし6年前の冬、横田さんの体に異変が起きました。

横田さん「40度の熱が出て。夫から『顔に斑点がでている』と。すぐに病院に電話したら救急に行ってくれと言われて、行こうとした時に両足が痛くて」
重い感染症をきっかけに手足などが黒く壊死する「電撃性紫斑病」を発症したのです。その後、主治医から告げられたのは両脚と手の指の切断でした。

横田さん「自分の想像もしていなかった現実がいきなりつきつけられたのと(切断した手足の)痛みで心が折れて、主治医にどうしてあの時私を死なせてくれなかったのかと泣きじゃくって」
生きる気力すら失くしていた横田さんを家族や周りの人たちは支え続けました。
横田さん「義足を履けば歩けるよと聞くと、自分の可能性を感じていける。それと家族が来れば何もなく笑い合える。会話に救われていた」

立ち直りつつあったある日、横田さんは義肢装具士の紹介で競技用の義足を体験するイベントに参加したことをきっかけに自分も走れる喜びを感じたといいます。

そこから横田さんの挑戦が始まりました。1日に10キロ走るなど特訓に励み、3年前に初めて熊本城マラソンに出場。

2022年12月にはハワイで行われたホノルルマラソンで完走を果たしました。

横田さん「10時間半ぐらいかけて親子3人で走ってきたんですけど、諦めなければ叶うんだと体験してきました」

熊本城マラソン2度目の挑戦を1週間後に控え、横田さんの練習にも熱が入ってきました。

横田さん「いつ止まるかが分からなくて、だから行けるところまで行きたいというのはあるんですけど。お願いします」
長女の花奈(はな)さんとホノルルマラソンに一緒に出場した仲間が伴走します。
花奈さん「一緒に走って少しでもサポートできればと思います」

熊本城マラソンの実際のコースを試走します。
横田さん「ペース的には?」
伴走者「速い!」
娘たちのサポートもあり、いつもよりもペースが上がります。

坂道は、特に義足が上がりにくくなるため一番の難関です。
横田さん「坂の往復が私を強くさせる」

約5kmの距離をペースを上げて走ったり歩いたりしながら感覚を確かめました。
横田さんは挑戦を続ける理由をこう語ります。
横田さん「人生の中で辛いことだったり悲しいことだったりはありますけど、そこから諦めずに何か一歩踏み出したら必ず自分の笑顔に繋がることを、これからも挑戦を通して伝えていけたら」

横田さん、支えてくれた人たちへの「感謝」の気持ちを胸に熊本の地を駆け抜けます。
横田さんは、初めての熊本城マラソン挑戦の時は22.6キロまで走ったということで、今回は少し距離を伸ばして30キロを目標にしたいと話していました。