衛星よりもコストが安く、高度が低い

偵察兵器としての気球のメリットは偵察衛星に比べてコストが安く、飛ぶ高度が低いので、高精度の画像が撮影できること、より微弱な電波でも拾えることなどが上げられます。軍事情勢に詳しい小原凡司氏によると気球から、取得データを衛星に飛ばし、リアルタイムで中国に送っていた可能性もあるといいます。

軍事用気球の歴史は

歴史を振り返ってみると気球が軍事用に使われたのは、18世紀末にさかのぼります。これはフランスが革命戦争中に作った偵察気球で、実戦に使われた最初のケースとされます。

太平洋戦争の末期には、日本軍が和紙で作った「風船爆弾」を飛ばし、偏西風に乗せて、アメリカ本土を攻撃しました。

「気球は恐ろしい暗殺者に」

中国でも近年軍事用気球の開発に力を入れており、2021年、中国軍の機関紙では、気球が敵の探知を避けやすいとして「将来潜水艦のような恐ろしい暗殺者になる」と紹介しています。ワシントン・ポストは中国空軍が海南省を拠点として偵察気球の一部を運用していて、日本や台湾、インドなどアジア地域の軍事情報を収集していると報道しています。

実際、今回の中国の気球と良く似たものは、日本にも度々飛来しています。2020年、仙台市で確認されたもののほかにも、2021年に青森県八戸市と小笠原諸島、2022年に九州の西の公海上や沖縄県でも確認されています。

アメリカは気球から回収された機器などの分析を進めていてますが、どこまで実態が明らかになるのでしょうか。

(「サンデーモーニング」2023年2月12日放送より)