英国王立防衛安全保障研究所 秋元千明 日本特別代表
「情報の収集に関しては多くの手段がありました。(中略)ただ問題は、集めた情報をどう見るのか、どう分析評価するのかは、人間のアナリストが長い経験と勘によってやっていた。それをパランティアの新しいプラットホームは人間の勘や経験に基づくものではなくAIが計算して、こういう行動を取る方がいいですよとか、選択肢はこれだけあるとか、アドバイスをしてくれる(中略~最先端といっていいか?)そうです。これからはそうなっていく。あらゆる情報を分析して、どうすべきか判断までアシストしてくれるんだから、軍や情報機関にとってはありがたい存在です」

情報分析の技術は日進月歩で、20年前アフガン戦争の時コンピューターを駆使して情報を分析しても1日に敵の位置を10か所しか特定できなかった。『ゴッサム』を使えば敵の正確な位置が1日300か所分かる。その上、どういう攻撃が効果的かまでアドバイスしてくれる。

英国王立防衛安全保障研究所 秋元千明 日本特別代表
「私が見たのはデモンストレーションなので、実戦では少し違うかもしれませんが、ロシア軍の位置は“Z”で表示される。それをクリックすると映像が出て、戦車だとか装甲車だとか、陣地だとか配置とかが全部わかる。航空機の位置も、それを支援しているであろう航空機も全部わかる。戦場の状況を立体的にとらえることができるので、このシステムひとつあれば、どういう対抗手段が採れるか判断しやすくなる」

ウクライナがロシア相手に善戦できる秘密は、民間企業のAIにあった。このパランティア社のCEOカープ氏、実は去年、来日していた・・・。

「AIプラットホームが強力になればなるほど人間の介在が重要になる」

去年12月9日、アレックス・カープ氏は来日し、岸田総理と面会している。
出席者は、総理とカープ氏に加え秋葉安全保障局長、外務省・河邉北米局長。パランティア社の公式ユーチューブには、台湾有事を意識したシミュレーション動画がある。そこでは、『ゴッサム』がいち早く危機を察知、対応に必要な情報を提供する。

『パランティア社』配備戦略担当 メレディス氏
「想定される例として、中国軍が南シナ海で日常的な演習を行うといった単純なことからエスカレーションが始まることが考えられます。その場合、全体像を把握し、戦術・作戦・戦略を行うために米軍と同盟軍はパランティア社に頼ります」

この来日から数日後、改訂された防衛3文書が発表されている。そこにはパランティア社のAIプラットホームの活用をにおわす文言が入っている。

【国家防衛戦略】・・・「無人アセットをAIや有人装備と組み合わせることにより部隊の構造や戦い方を根本的に一変させるゲームチェンジャーになり得る」
【防衛力整備計画】・・・「AIにより行動方針を分析し、指揮官の意思決定を支援する技術を装備品位反映するための研究を行う…」

元陸上自衛隊東部方面総監 渡部悦和氏
「例えば陸上自衛隊であれば、有人の攻撃ヘリコプターは将来なくなります。それを無人のヘリコプターに変える時、当然AIが搭載される計画が進んでます。無人化の流れの中でAIは不可欠なんです」

少子化で自衛官の成り手が減る中、AI導入による無人化が進まなければ作戦は遂行できないと渡部氏は言う。だが、意思決定までもコンピューターに委ねるのは危険だという不安は常について回る。

元陸上自衛隊東部方面総監 渡部悦和氏
「分析、立案、決定の作戦のループを全部AIに任せたら大問題になる。ループの中に必ず人間を入れなきゃいけない。幕僚を入れなきゃいけないという原則がある」

英国王立防衛安全保障研究所 秋元千明 日本特別代表
「その通りです。AIプラットホームが強力になればなるほど人間の介在が重要になる。AIへの過度な依存は結果として人権を無視するとか人命を軽視するとかなり得ません。(中略)AIはツールであって、それを使う人間の倫理観が非常に重要になる」