ウクライナは確度のある情報として、10日以内にロシアが大攻勢をかけてくると読み、ロシアは夏までに新たに50万人を動員するという。国力ではかなりの差があるロシアとウクライナ。しかし、ウクライナは想像以上に善戦しているのもまた事実だ。今のところ互角以上と言えるかもしれない。実は、このウクライナの強さの裏にアメリカのある企業の存在があることはほとんど報道されていない。その存在と“魔法”とまで呼ばれる能力を紐解く・・・。

「多くの出来事において、こっそり歴史を変えた」

あるトークイベントでウクライナのフェドロフ第一副首相兼デジタル改革大臣は言った。
「新しい技術の導入を支援しているパートナーたちにあらためて感謝の意を表します」

感謝された側の代表は、こう答えた。
「私たちはアメリカでテロを阻止しました。ワクチンも配布しました。パランティア社が多くの出来事において、こっそり歴史を変えたのです」

発言したのは、アメリカ『パランティア・テクノロジーズ』CEOアレックス・カープ氏だ。
パランティア社のAIプラットホーム『ゴッサム』は、ウクライナ軍の善戦に大きく寄与している。

システムはこうだ。
まず、軍事衛星や偵察機など西側の軍事顧問団が入手できるあらゆる情報に加えて一般人のSNSなどから敵の位置情報、被害状況など膨大な情報を、スターリンクを通じて収集。
それをAIが瞬時に分析し、敵の正確な位置情報、効率的な攻撃法などを立案。その情報はPCを通して戦場の各所で同時に共有できる。ウクライナ軍がヘルソンを奪還できたのも『ゴッサム』によって、ロシア軍の正確な位置を把握できたためといわれる。
かつてアメリカがパキスタンでビン・ラディン容疑者を殺害した時にも、このパランティア社のシステムが使われたという。以前、カープ氏はパランティア社の存在について「私たちは世界の出来事において、公の場で言うことができないほど大きな重要な決定的な役割を果たしている」と述べている。

『パランティア・テクノロジー』はAIを使って機密性の高いデータを解析し、意思決定を支援する先進的なソフトを提供している企業だ。約3000人の社員で、時価総額は日本円で2兆2817億円。クライアントは米国防総省、CIA、FBI、英国防省など。

『パランティア社』配備戦略担当 メレディス氏
「ゴッサムは価値観を共有する人々に、迅速な意思決定を行うためのテクノロジーを提供し、世界をより安全な場所にすることができるのです」

ちなみにCEOのカープ氏は哲学博士で、気功と瞑想が日課だという。

「あらゆる情報を分析して、どうすべきか判断までアシストしてくれる」

パランティア社のAIプラットホームのデモンストレーションに立ち会った経験を持つRUSI英国立防衛安全保障研究所の秋元氏に、『ゴッサム』のどこが最も画期的なのかを聞いた。