「コッフェルで氷からお湯を沸かしカップ麺を食べた」 12年前の“現場” 町民の写真は語る

 写真展に参加する大槌町吉里吉里の中村公男さんです。震災の日は地区の防災組織の記録係として必死に撮影を続けました。

中村公男さん

(中村公男さん)
「本当は写真を撮るのをやめて逃げようかなとも思ったが、撮らなければ。必死だった。写真を撮るのに。これは船を持っている人。呆然としている。たぶん船がひっくり返った後」

 中村さんは今回の写真展を様々な世代の人に見てもらい、12年前の出来事を知ってほしいと話します。

 被災者のひとり、植田医院の植田俊郎院長も当時の様子を撮影していました。地震が発生したのは診察の最中、建物の屋上に逃げました。

(植田俊郎さん)
「知り合いや近くの農協の職員(と屋上に避難した)。3階の倒れた冷蔵庫から氷を出して、氷をコッフェルに入れてお湯にしてカップ麺を食べた」

植田俊郎さん

 植田さんが撮影した写真には町が海に飲まれた様子やヘリコプターで救助される様子が写っていて、当時の緊迫した状況を伝えています。

 写真展を企画した野田さんは残された記録から感じてもらいたいことがあると話します。

(写真家 野田雅也さん)
「どうしても大きな復興事業が復興のように見えるが、実は一人ひとりの小さな手によって作られたものだと思う。漁師の人も民宿の人も一ひとりの小さな愛情を込めた手作りでこの町ができた。それを少しずつ知ってほしい。埼玉県在住の私が客観的な目で撮影した町と、町に暮らした人たちが撮影した町を、両方から見ることによって、ふくらみのある町が見えてくるのでは」

 報道写真家がカメラに収め続けた被災地・大槌町はまもなく震災発生から12年を迎えます。震災の日の様子と復興の軌跡を伝える写真展は大槌町文化交流センター「おしゃっち」で開かれ、3月4日から3月12日までは野田さんの撮影した写真が、3月13日から3月20日までは町の人が撮影した写真が展示されます。