「G7サミットではマスクを外したい」
移行方針は固まったものの、その具体的時期は、すぐには決まらなかった。4月1日や5月1日とする案が上がっていたのだ。特に、年度替わりの4月1日案を推す声が強かったという。
しかし、今回、5月8日と決めたワケ。
「現場にどういった声があるのか、何度も聞き取り、最終的には総理が決めた」
官邸幹部はこのように語ったうえで、3つの理由を挙げた。
1. 自治体や医療機関の準備期間確保
5類への移行にあたり、大きく影響を受けるのは、自治体や医療機関だ。「準備には3か月程度は必要だ」との声が、自治体や医療関係者から相次いでいた。また、「地域によって準備状況に差が出ることも懸念した」という。一律で、長い幅での移行期間をとることとなった。
2. 統一地方選挙と大型連休中の切り替え回避
3月下旬から4月にかけて全国で行われる統一地方選挙。自治体は、選挙準備に人手が取られる。医療体制の整備などを要する新型コロナ対応と選挙との両立は困難だと判断した。加えて、大型連休中の5月1日は、医療機関が休日体制をとっているところも多い。現場への負担軽減のため、残る選択肢は大型連休明けとなった。
3. G7サミットへの強い意識
議論の当初から念頭にあったのは、5月19日からのG7広島サミットの開催だ。岸田総理は周辺に対し、このように度々語っていたという。
「サミットまでにはマスクのない状況を作りたい」
昨年から立て続けに行っている外遊先でのノーマスクの状況も政府の判断を後押しした。
別の官邸幹部も。
「日本が世界基準にしたことをG7サミットで表すのが1番良い」
G7サミットという政治イベントが、官邸幹部や総理周辺らの頭には強くあったのだ。そして、4月中や5月1日に移行した場合、大型連休によって感染が拡大する恐れがあることから、最大限、サミット開催に近い連休明けとすることを決定した。
最終的な総理の決断に、官邸内では、ほとんど異論は出なかったという。

「早くノーマスクにしたい」官邸の思い
こうした中で、注目されるのが、マスクの着用ルールだ。
岸田総理は27日、「屋内外問わず、個人の判断に委ねることを基本とする」との方向を示したうえで、時期やルールについては、検討を続けるとした。「できるだけ早くお示しする」という。
いつ示すのか。ある政府関係者は言う。
「2月にも示したいが、あとは総理の決断次第だ」
マスクの着用は、法的な強制はなく、政府が国民に呼びかけ、推奨してきたことだ。年明けのある日、総理周辺はこのように語っていた。
「早くノーマスクの状況にしたい。今外さなければ、日本だけマスクを外せない国になってしまう。外せる“雰囲気”を作ることは、どうしたらできるだろうか」
緩和に向けた“雰囲気”を醸成したい…。方法を模索する率直な思いが言葉に表れていた。
というのも、政府は、昨年5月、マスク着用ルールを緩和し、屋外では原則マスク不要と呼び掛けた。一方、屋内については、距離を確保し会話がない場合を除いて、原則、着用を推奨している。
しかし、こういった“屋外マスク不要ルール”の中でもなお、常にマスクを着用し続けている人が多いのが、日本の実情なのだ。
岸田総理自身も、周辺に対し、こんな本音を語っている。
「なかなか屋外でも日本人はマスク外さないよな」


















