2022年の新車販売台数

自動車市場の規模で日本がインドに追い抜かれました。インド自動車工業会の発表によれば、2022年のインドの新車販売台数は、乗用車と商用車あわせて472万5472台で、前年比25.7%増加しました。一方、日本の新車販売台数は、半導体不足などの影響を受けて、5.6%減の420万1320台と、1977年以来45年ぶりの低い水準に留まりました。
半導体などの供給混乱が落ち着けば、今後、日本の販売台数も増加に転じるでしょうが、インドの急速な市場拡大を考えれば、抜き返すのは難しそうです。日本の自動車市場の規模は、世界第3位から4位に落ちたことになります。ちなみに世界一は中国の2356万台、その内のおよそ20%がEV=電気自動車でした。2位のアメリカは1390万台でした。

人口でも世界一となったインド

共に人口14億人を超える中国とインド。経済発展に伴って、自動車市場が拡大するのは当然のことです。昨年、中国が61年ぶりに人口減少に転じたことから、昨年末時点でインドの人口は、中国を追い抜き世界一になったと見られています。一方の日本は、すでに人口減少時代に入っており、自動車市場も縮小していくことは避けられないでしょう。バブル期の1990年の777万台は言うに及ばず、販売台数でみれば、500万台も厳しいように見えます。

日本市場が縮小する中での競争力維持

言うまでもなく、自動車産業は日本の基幹産業です。生産高や雇用を見ても群を抜いて大きな産業であり、日本の国際競争力そのものを体現する産業です。その産業のホームマーケットが小さくなっていく中で、雇用やサプライチェーンを維持し、競争力をキープしていくのは至難の業です。すでにグローバル化した自動車産業にとっては、これまで同様に、世界市場で価値があると認められる車を提供し続けていく以外に、その道はありません。
今は、そのテーマが、脱炭素化、電動化、自動化、コネクティビリティーの先進性であり、移動サービスとしての新しい価値の提供なのでしょう。

トヨタは社長交代

折しも、トヨタ自動車は、こうした新しい価値を前面に掲げて来た豊田章男社長が、4月1日付で会長に就き、13歳も若い佐藤恒治執行役員が社長に昇格する人事を発表しました。思い切った若返りによって、変革を一段と加速して欲しいという豊田社長の期待の表れであると同時に、現状が未だ満足できる状況にはないという厳しい現実も浮き彫りにしています。     

スズキはインド市場首位死守に向け

同じ26日、スズキは2030年度までにEV開発に2兆円を投じ、主力市場のインドにSUVなどEV6車種を投入すると発表しました。スズキは先行したインド市場で現在、シェアトップを誇っているものの、EVではタタや韓国勢に攻め込まれており、大気汚染に悩むインド政府がEV普及に力を入れる中、乗り遅れるわけには行かないと判断したものです。EV化の動きが相対的に遅いインドですら、対応が迫られていると言えるでしょう。
「電動化だけが脱炭素ではない」という議論は、正論でしょう。しかし、世界の市場は、すでに電動化を前提に大きく動き始めており、日本メーカーの力の真価がいよいよ問われる局面に入ってきました。それは日本の競争力の浮沈を賭けた戦いでもあります。