「あの場所に必ず戻りたい」

武器を磨いて代表に生き残ってきた選手が、武器だけでは足りないと知った。

「“日本代表として試合に出られること”が、僕にとってはまず何よりも1番嬉しいこと。リリーフサーバーという大切なチャンスを自分に与えられたことは、本当にそこが心から嬉しいことだった」

ただ、変化の兆しはあった。

「五輪に初めて出場したパリで、五輪というものがこんなに楽しいものだとは思わなかった。この特別な場所でプレーすることがバレーをやっていて一番楽しい瞬間だった。あの場所に必ず戻りたい。世界トップと戦う中でその想いはどんどん強くなった」

芽生え始めた想い。
そして初めて見せるエゴ。
表情が固くなる。

「去年までは“自分はまずサーブで”と割り切れていたのが、最近は、『やっぱり“スタート(スタメン)”だったり、“フロント(前衛)”でプレーしたい!』というような強い思いが自分の中で大きくなってきていた」

1歩、前に出た。
そして、そこで知るバランス。

「今までは“サーブだけに100%集中する”というところであったけど、『やっぱりスパイクでもっとアピールしたい!』というところで求めていって、結果が、サーブでの集中力の乱れ、というところに繋がっていた」

役割の均衡は崩れる。でも。

「振り返れば、世界を相手に、あのコートに自分が立って、プレーすることは、“あの場所(五輪)でしか絶対に得られない特別なもの”がそこにありました。自分の最大の持ち味である“高さ”というところで、世界に対しても『自分のこの武器は通用するんだ』っていう部分がすごく大きかった」

欲が出た。
それもまた、23歳になった甲斐の変化だった。
現状に甘んじない。
もっと、先へ。

「今後のオリンピックまでの過程で、こういう悔しい経験もできたのも、一つよかったことなのかなと思っている。またここから這い上がって頑張るだけ。今回一つ、自分自身を見直すきっかけにもなった。最終的な目標が、ロサンゼルス五輪での“12名枠”に入ること。今回のこの結果は、悔しい部分はもちろんありますけど、しっかりと自分の中で受け入れていくしかない」

ここから、甲斐の競争が始まる。
だからこそ、アジア大会でやりたいことがある。

「本当に自分が、チームの“中心(軸)”となれるようにしたい。良さは、“攻撃力”。ここは誰にも負けたくないと思っている。そこを存分にコートでアピールできたらなと思います。監督からも『お前の最大の武器は高さなんだから、そこを消すな』と言われているので。一番の長所である“高さを活かした攻撃力”をしっかりと自分の真ん中に置く。その一方で、ディフェンスの新しい技術を身につける。そのあたりのバランスが、すごく大事なこと」

バランス。
個人で打開する力と、チームへ還元する力。

「“ディフェンス(守備面・サーブレシーブ)”は、日本チームの全体としても求めているところではある。『どんなにトスが乱れても、自分がスパイクを決めきれるから』と言って満足するんじゃなくて、ディフェンスで、セッターに次の攻撃の選択肢を増やさせることこそが今の日本には重要になってくる。そこは本当に、最低限もっともっと身につけていかなければいけない」

個の目線を、チームへと向けさせる。