■総理も前向きか
こうした海外の動きに反応したのが、冒頭に出てきた自民党のデジタル社会推進本部だ。平将明NFT政策検討PT座長が中心となってまとめたホワイトペーパー(提言案)では、「WEB3.0時代の到来は日本にとって大きなチャンス。しかし、今のままでは必ず乗り遅れる」と訴えている。その危機感を伝えるため、総理官邸に乗り込んだというわけだ。

このほか、
・WEB3.0に関する国際カンファレンスの開催や、総理の口から「新しい資本主義のひとつの柱になる可能性を感じる」などのメッセージ発信をしてもらうこと
・5月23日で調整されている日米首脳会談の場でデジタル資産やWEB3.0を議題にとりあげること などを求めた。
総理はおおむね前向きで、今後、木原官房副長官が中心になって対応を具体的に検討していくことになったという。同席者は「総理は近く自分でWEB3.0についてメッセージを出したがっていた」と語る。
■今後の課題は
ただ、仮にトップが動いたとしても、待ち受けるハードルは高い。日本はNFTや暗号資産という新しい概念に対し、法整備や税制などで諸外国と比べ大きく遅れをとっているからだ。
一番の課題は、日本では、法人が暗号資産を保有し、含み益が出ただけで法人税の課税対象になること。これでは会社が成り立たないということで、ASTARという日本発のスタートアップはシンガポールに“流出”してしまった。
では、年末の税制改正でなんとかできないか、というところだが、ある自民党の税調幹部はこうした税制の見直しについて「無理だろう。暗号資産にしても、まだマネーゲームの一環という位置付けだ。実際の雇用創出に結び付いているわけでもない」とにべもない。実際、NFTをめぐっては投機性の高さやマネーロンダリングに悪用される可能性などが指摘されている。 いずれにせよ、この分野はスピード勝負、待ったなしである。慎重なイメージのある岸田総理が本当にリスクマネーを取りに行くのか、判断が注目されている。