■WEB3.0とは?
WEB3.0は、新しい概念なので定義は固まっていない。ただ、ざっくり言えばこれまでGAFAと呼ばれる巨大なIT企業などが情報や利益を独占していたインターネットの世界で、ブロックチェーンという新しい技術を使って非中央集権型のネットワークを構築し、情報を分散管理していこうという動きだ。ネット上で生まれた富をより多くの人に分配できるような仕組みを目指している。これは、岸田総理が掲げる「新しい資本主義」の考えにも近いのではないか、と言われている。
そして、この新しく、世界中のプレイヤーが参画するインターネットの世界で使われるのは円やドルではない。ここで主役となるのは「NFT」なのだ。

■成長戦略のカギ握る?NFT
先日、歌手で俳優の加山雄三さんのヒット曲「お嫁においで」のデモ音源を「NFT」として発売する、とのニュースが流れた。加山さんの85歳の誕生日を迎えたことを記念したもので、加山さんと一緒に音源を聴ける権利などを含む、一番高いパックは85万円だ。
また、女性アーティストのBABYMETALは、デジタル関連企業とコラボレーションし、バーチャル空間で履けるスニーカーと実際のスニーカーのセットを、こちらも「NFT」として販売した。限定10点をオークション方式で売り出し、取り引きは暗号資産で行われた。一番高いものは時価換算で50万円以上の値段がついたという。
NFTというのは世界に一つしかないデジタル資産を指す。一般的なデジタルデータは簡単にコピーできるが、NFTは偽造できず1点1点、本物だという証明が与えられる。取引された場合の履歴も残る。WEB3.0の世界では、こうしたNFTがあたかも「通貨のように」取引されることになる。
NFTの市場は爆発的に成長していて、自民党のNFT政策検討PTの資料によると、グローバルな市場規模は2020年の74億円から翌2021年には1兆5400億円と、約209倍も大きくなった。アニメやゲーム、漫画などで世界に誇れる多くのコンテンツを持っている日本は、このNFTのマーケットで優位に立てる可能性がある。
■世界ではすでに覇権争い
アメリカでは3月9日、バイデン大統領が暗号資産をはじめとするデジタル資産の研究開発を加速させるよう命じる大統領令を出した。省庁や機関によって対応が異なっている現状を改め、アメリカがデジタル資産で経済的に優位に経てるように国家戦略を180日以内に打ち出すように求めている。
一方、イギリスでは4月4日、財務大臣が王立造幣局に対し、今年の夏までにNFTを発行するよう求めるなど、暗号資産分野のさらなる発展を促す取り組みを発表した。WEB3.0時代の覇権争いがすでに始まっているのである。