「父のような存在」東洋大・梶原総監督と突き詰めた“緻密な戦略”
山村監督が見出した才能は、東洋大学進学後に一気に花開く。2023年、大学4年時に日本選手権を制し、世界陸上に出場すると、2024年には日本選手権を連覇し、パリ五輪へ出場。高校まで、世代別の大会すら優勝できなかった少年が、わずか4年で日本代表のエースへと急成長を遂げた。

「支えになる存在はどなたですか?」という石川の問いに、中島は「一番は監督ですね。自分の中で父のような存在」と答えた。その人物こそ、東洋大学陸上部の梶原道明総監督(73)だ。
梶原総監督は中島の持続力に着目。「ジョセフはトップスピードが高いから日本でトップになったのではなくて、トップスピードよりもちょっと下のところのスピードを維持する能力が高い。そのペースをあえて乱さないでいって前半もう少しスピード出していけるようにならないかな」と、トップスピードを上げるのではなく持続力を活かした後半型のレースプランを選択した。さらに、エネルギーロスを減らすために「芝生の上を裸足で走る」トレーニングを取り入れ、足首を固定して地面からの反発力を無駄なく推進力に変える走りを叩き込んだ。

取材現場では、中島が「せっかくなので、我々のトレーニングを一緒にやりませんか?」と提案し、石川が実際に身体を張って体験する場面も。
まずは走りの要となる、背骨や骨盤と太ももの骨をつなぐ「腸腰筋」のトレーニング。壁に沿って横向きに片足で立ち、もう一方の脚の太ももを上げた姿勢から、脚を地面に下ろしてすぐに前へ引き戻す。「走っている時に足が流れないのが一番大事。後ろに流れるスペースをできるだけ小さくしたい」と語る中島の手本にならい、石川も挑戦。「音が鳴ったらすぐ返す」という素早い動きを繰り返し行うと、慣れない部位への急激な負荷に「ここヤバい!」と思わず声をあげる。

続いて、最新テクノロジーを搭載したマシンを使って10kgの負荷をかけて走るトレーニングに石川も挑戦。腰に巻いたベルトの重さに「ちょっと待って!本当?」と戸惑いながら走った石川だったが、計測データを確認した中島は「見てください、グラフが一定で持続力高いです。こんなきれいなグラフないですよね。見習います」と絶賛。「120%出せていた」とお墨付きをもらい、石川が「よし!」と喜びを爆発させる一幕もあった。
東京世界陸上の決勝前、梶原総監督から「2人で組み立てたプラン、緻密な戦略を信じて惑わされずに走ってこい」と背中を押された中島。その言葉通りに自分のリズムを貫き、見事に6位入賞を果たした。
現役時代にコーチと二人三脚で歩んできた石川は、「自分がダメかなと思った時に信じてくれたり、『できるんだ』と言ってくれる存在がいるから頑張り続けられる」と深く共感。レース後に涙を流した梶原総監督と抱き合った中島は、「親孝行的なこともできたのかなと思う。もっといい景色を監督に見せたい」と語った。

















