『声なき人たちの声』は届いている ICCは「最後の砦」

松原:国連総会で前も演説されたりしましたが、今回行かれる予定ではあったんですか?

赤根:今のところ行く予定にはしているんですが、ビザが使えなくなる可能性が大ですので、渡航不可になる可能性が大きくなったと思っています。

松原:色々な国に行くのも、相当不自由なんですか?つまり、プーチン大統領のロシアが逮捕状を出してたりするわけですよね。あるいは今回も制裁がある。不便という意味では各国を回ることも、正直いろいろ不自由が出てるんでしょうか。

赤根:ロシアからの逮捕状の件なんですが、今はモスクワの裁判所で私に『有罪判決』が出ていまして。刑の重さまでははっきりわからないんですが、3年半から15年ということになっているようです、拘禁刑。

何が起きるかというと、逮捕状の段階ではなく『独立した国における判決が出ている』ということで、それこそ犯罪人引き渡し条約を結んでいる国々には行けないということになります。ですから出張する際には、中継地も含めてICCが事前に調べた上、かつ各国との関係の重要性などを加味しながら、行く場所を決めていくということになります。

松原:おそらくICCの判事を引き受けられて、そして所長を引き受けられた時も、こういう事態になるっていうのは想像したこともおありでしたか?

赤根:もちろん、そこまで細かいことを想像する状況ではなかったですけれども。私が所長になった時には、すでに私に対してのロシアからの逮捕状は出ていましたし、パレスチナの武力紛争も始まってましたので、将来的にかなり厳しい状況になるんではないかという想像はしていました。

松原:逆に今のそういう状況になって、ICCの仕事の重要性みたいなものを、改めてご自身の中で確認するなんてことはあるんでしょうか。

赤根:はい、やはり多くの国々からの支援の声が届いています。そういう事態に至っても、ICCが今までと同様に裁判業務だとか捜査だとかを続けていることに対しての賞賛、そして最後には、このグローバル社会の中で最も重大な犯罪を犯した人たちを処罰することによって、取り残された被害者たちに希望の光を灯し続けるという役割を持っているICCに対する期待は、今まで以上に高まっています。それらは『声なき人たちの声』として私たちには届いています。

松原:逆に今、世界は『力の支配』というのがどんどん広がってるように見える。そこをどう見ていらっしゃるんですか?

赤根:その意味では、ICCが『最後の砦』かなという自負は持ってますし、職員たちの士気も高いです。こうした状況になって、例えば何らかの空席が出て募集をすると、今まで以上に応募してくる方々が増えてるんですね。びっくりするぐらいたくさんの応募が来てます。若い人たちはこうしたICCの取り組みに、自分もメンバーの一人として力を尽くしたいと言ってくださる人が増えてるってことです。

松原:逆に増えていると。前にお話を伺った時に『眠れない夜がありますか?』と伺ったら、『あります』とおっしゃった。今眠れてますか?

赤根:眠れる日と眠れない日とありますね。

松原:眠れない日はどうされるんですか?

赤根:『いつか眠れるだろう』っていうような(笑)。楽観的なタイプなので。