「“報われたな”と心の底から思える」
ミドルの“本当の価値”を教えてくれた恩人がいる。
「より、ミドルとしての“専門性(プロとしての深い戦術)”、高い考えになったのは、社会人になって、フィリップ・ブラン(前代表監督)と一緒に代表でやってから」。そう振り返る。
「ブラン監督から“ミドルブロッカーとは一体どういうポジションなのか(ミドルとは何か)”という概念の深さを教えてもらった。それまでは、恵まれた体格に任せて“なんとなく”の直感でやってきたものを、ブランから“相手セッターの指先の癖、アタッカーの助走の角度、こちらのブロックの面の残し方”というのをミリ単位で叩き込まれてきた。そこから『コートの上ですごい頭を使って考えてプレーするように』なったかな、と思います」
ミドルブロッカーとして叩き込まれたのは“準備の大切さ”。
「僕は、試合前の相手の映像を見る量が圧倒的に多い。自分の頭の中に叩き込まなきゃいけないデータの量も一番多い。試合中の目まぐるしいラリーの中で、瞬時に判断(選択)をする必要があるから、頭を使って本当に必死に、必死にプレーして、ようやく1つの綺麗なブロックタッチになる。でも、そうやって僕らミドルが頭を必死に使ってワンタッチを取ったとしても、それが直接“自分の得点”になるわけじゃない。試合の中で一番多く派手に得点を奪うのは、サイドやオポジット選手たちなんで。観客やメディアの注目(スポットライト)が一番集まっていくのは、彼らサイドの選手たちなのが当たり前だと思う。ミドルブロッカーというポジションは、『コートの中で一番“報われない”ポジション』だと思うんですよ」
だからといって、そこに悲観的な思いはない。むしろ逆だ。
「今の日本代表チームは、僕らミドルブロッカーというポジションに対しても、キャプテンの(石川)祐希をはじめ、みんながもの凄く“リスペクト”を持って接してくれている。 『タイシ(小野寺)さん、今の真ん中のステイのブロック、めちゃくちゃ効いてたよ! ありがとう!』って。僕たちの見えないブロックの貢献や割り切りのところに関して、コートの中で深く分かって評価してくれる。そういう素晴らしいチームメイトとの“信頼関係”がコートの上でできた時に、目立つスタッツには残らない小さな積み重ねですけど、『あぁ、毎日居残りで頭を使って努力してきて良かったな』って思える」
「だから、僕個人としては、フロントで綺麗なキルブロックが1本できたとか、そういう目に見えるプレーももちろん嬉しいですけど、自分の見えない全てのプレーが、最終的にチームの“勝利”という形に繋がった時、その瞬間に、『僕はバレーボール選手として“報われたな!”って心の底から思える』んです」
「ミドルブロッカーの本当の価値って、一般のファンからしたら一番“伝わりにくいポジション”だと思う。結局のところ、プロの世界って、フロントのブロックが圧倒的に優れている選手や、ミドルでもスパイクでたくさん点が取れる選手、あるいは一発で流れを変えるサーブで直接得点が取れる選手という、目に見える分かりやすい“直接得点”に対して、評価が高くなるとはわかっている」
「でも、その華やかな得点力の中で、ミドルとして。『毎試合波を無くして安定したプレーを提示し続けること』もプロとしてもの凄く大事。『怪我をせずにワンシーズン全試合を戦い抜くこと』もプロとしてめちゃくちゃ大事。『そのチームの戦術に100%フィットすること』も何より大事だと思う」
あるべき姿がわかっているからこそ、晴れやかな笑顔で続ける。
「僕は、コートの上で一番目立つ『主役(ヒーロー)』にならなくていい」
『目立たなくていい』 それが小野寺の信念。
日本代表のミドルブロッカーとしての矜持。
「僕は、今ここにいるすべての選手たち、『一緒にバレーをやっていて楽しい奴らと、1日でも長く一緒に日の丸を背負ってバレーボールができれば、それで僕は一番幸せ』なんです」
「周りが活躍するための動きが僕はできればいい。僕は試合に勝って、『最高のメンバーの最高の笑顔』が見られればそれでいい。何よりそれだけで十分なんです」
仲間の最高の笑顔。
心から報われる瞬間。
そのためならば、すべての時間を彼らに捧げる。
見えない仕事を、誇りに変える。
それが、小野寺太志だ。

















