「常識が通らない」高裁の逆転敗訴がもたらした波紋
己の正当性とハンターの誇りを取り戻すため、池上さんは処分の取り消しを求めて北海道を提訴しました。
2021年12月の1審・札幌地裁は、池上さんの主張を全面的に認め「道公安委員会の処分は著しく妥当性を欠き違法」として処分を取り消す判決を言い渡しました。
しかし、道の控訴により舞台は札幌高裁へ移り、事態は再び暗転します。
2024年10月、札幌高裁は「跳弾(弾が固い障害物に当たって弾道が変わること)の可能性」を指摘し、1審判決を取り消す逆転敗訴を言い渡したのです。
「今回については、理解を超越している」と憤りを隠さない池上さんは、強く警鐘を鳴らします。
「近距離で撃ってあっちこっち跳弾すると言われたら、誰も撃てなくなる。この高裁の判決の本当に重要な点は、常識が通らなくなったことです」
高裁の判決は、全国のハンターに冷水を浴びせるものでした。
「今の状況ではハンターが全ての責任を持つことになる」。そう危惧した北海道猟友会は、自治体からのヒグマ駆除要請の拒否を検討することを明らかにする事態にまで発展しました。
民間人に危険な作業を要請しておきながら、万が一の際には全責任を負わせる行政の姿勢。その深い溝は、最高裁での決着へと持ち越されることになりました。
(第2回「猟銃なきハンターの孤独な闘い」へ続く)
【画像】池上治男さんが「要請を受けて」クマを駆除した現場など
【連載の続きはこちら】
▶《連載②》猟銃なきハンターの孤独な闘いと、最高裁での歴史的「逆転勝訴」
▶《連載③》戻ってきた猟銃と消えた「形見の銃」自らの命を懸けて現場に向かう根源的な”問い”














