回転寿司の多くは、もう回っていない

その謎を解く前に、冒頭の話に戻ります。

かっぱ寿司のフルオーダー方式、はま寿司のストレートレーンに加えて、スシローも2023年から、注文された商品以外をレーンで回すことをやめました。大手4チェーンのうち、いまも全店で寿司を回し続けているのは、くら寿司だけです。

やめた理由は、衛生面からだけではありません。かっぱ寿司が回転レーンを減らし始めたのは2015年ごろ、はま寿司は2016年ごろからです。狙いは廃棄を減らすことと、人手を省くこと。迷惑動画の騒動は2023年で、回転寿司が回らなくなったことを決定づけた要因だったといえるのかもしれません。

そしてこの「回すのをやめた」という判断が、高い原価率の話と、そのままつながっています。

高い原価が成り立つのは、捨てなくなったから

回転寿司には、ほかの外食にない弱点がありました。見込みで握ってレーンに流すので、誰にも取られなかった寿司はそのまま捨てることになる。生ものですから、時間が経てば売れません。

ここで威力を発揮したのが、データ化の仕組みです。くら寿司は皿カバーのコードで「この皿がいつレーンに載ったか」を追いかけ、店の混み具合から「いま何をつくるべきか」を計算する製造管理を磨いてきました。その結果、同社が公表している廃棄率は、導入前の平均12%超から2021年時点で約3%まで下がっています。つくったものの1割以上を捨てていた事業が、ほとんど捨てない事業に変わりました。

12%超から3%は、9ポイントの低下です。相対で見れば、捨てる量が4分の1近くまで減ったことになります。売上原価率と廃棄率は分母も対象範囲も違うので、この2つを差し引きして「だから原価を1割上げられる」と計算することはできません。それでも、捨てる量がここまで減れば、同じ売上でも使える原資は確実に増えます。高い原価率は、いいネタと、捨てない仕組みのセットで成り立っています。

はま寿司も、注文品を直送するストレートレーンへの切り替えに約72億円を投資して、食品の廃棄を年間1,100トン規模で減らす見込みだと発表しています。冒頭で触れた「もう回っていない」の裏側には、この計算がありました。