国内の利益率は薄いが、答えは海外に

ここまで読むと、回転寿司は盤石のように見えるかもしれません。ところが各社の利益率は意外と薄く、直近の営業利益率は、かっぱ寿司が1%弱、くら寿司が2.5%、国内のスシローが6.8%、はま寿司が8.4%です。仕組みを磨き抜いても、国内では値上げのしにくさも薄利も消えていません。デフレの30年をかけてコストを下げてきたぶん、客の側にも「回転寿司は安いもの」という感覚が根づきました。せっかく安くつくれるようになっても、その安さが値段の相場として定着してしまい、値上げの余地がなくなる。下げた努力が、そのまま自分の首を絞めている状態です。

ところが、この仕組みを海外へ持ち出すと話が一変します。アメリカのくら寿司では、回転レーンの皿が全店平均で約3.8ドル。いまの為替だと1皿600円ほどです。日本では120円や150円の皿が、アメリカでは600円で売れて、それでも店は行列。スシローの海外事業は、店の数では国内の半分以下なのに営業利益では国内を上回り、利益率は海外が12%台、国内が6.8%です。日本で磨いた仕組みが、海外では倍の利益率で回っていることになります。

2026年秋、スシローはニューヨークのタイムズスクエアにアメリカ1号店を出す予定です。発表資料には「日本で磨いたブランドを、そのまま世界へ」とあります。2015年にも一度アメリカへ出ていますが、そのときは現地の好みに寄せた創作和食の店で、翌年に閉店しました。今度は、つくり変えずに持っていくという方針です。

回転寿司の安さは、仕入れを買いたたいて生まれたものではありません。捨てる量を減らして生まれたものです。そしてその仕組みは、いま海を渡ろうとしています。次に席に着いて、レーンに寿司が流れていなかったら、それは手を抜いているわけではありません。注文を受けてから握ることで捨てる量を減らし、浮いたぶんをネタに回している。目の前の1皿の裏側では、そういう計算が動いています。

<コムギコ:資本主義をハックしろ!!>
毎日ニュースを100本を読むビジネス系VTuberのリサーチャーであるコムギ(comugi)が、日々の経済にまつわるニュースを解説するビデオポッドキャスト。本記事は2026年8月10日配信『なぜ回転寿司は「まわる」のか?:すしチェーンをめぐる冒険 #コムギコ #89』から抜粋してまとめたものです。