「怒ることも、泣くこともできない」呆然と過ごした長い夜
突然の悲劇を前に、怒りや悲しみといった感情すらも抜け落ちてしまった敏さん。静まり返った家の中で、ただ呆然と過ごした絶望の夜を振り返ります。
(堤 敏さん)
「息子の死を宣告されたあとのことは、あまり記憶がありません。瞬間、瞬間、その映像が覚えてるというか。病院の廊下、控室から処置室までの廊下、なんでこんな長いんやろうと感じました」
「自宅に帰る車の中、隣に座っている家内がじーっともう前を見て
『なんで将太なん、なんで将太なん』
何度も何度も同じことを言っていて、ちょっとつっつけば崩れて消えて、なくなっちゃうんじゃないかなと思えるほど小さく見えて、憔悴しきっている姿…。そんなことばかり、覚えていることはすべて、断片的なもので、うまいこと説明することができません」
「息子は翌日、司法解剖に回されるという説明を受けて、息子を搬送された病院に残して、家に帰ったんですけども、何時に帰った、誰の車で帰った、どこを通って帰った、どの道通って帰った、そういうことも覚えてないんです」
「家に帰ってからは誰も口をきかない、話をしない。家内と子どもたちのすすり泣く声だけがずっと聞こえていました」
「私はもう、感情が抜け落ちた、魂が抜けたというような状態になってしまって、呆然としてるだけ、怒ることができない、泣くことができない、涙出てこないんです」
「そのときは何をどう理解して、どう受け止めたらよいのか、何が起こったのか、何が起こっているのか、何もかもが分からない。ずっとそんな感じで、朝を迎え、一晩過ごしました」














