被害者との接触が困難になってきている現状
さらに被害者報道にとっての大きな環境変化が、犯罪被害者支援制度の充実だ。
今年2026年に始まった犯罪被害者等支援弁護士制度(法律援助・注5)では、被害者は無料で、早期の段階から弁護士による包括的かつ継続的な援助を受けることができるようになった。また以前から各地に犯罪被害者支援センターが設置され、警察OBや市民ボランティアによる被害者サポート体制ができあがってきた。
日本で最も手厚い活動組織の1つであって警察・支援センター・弁護士によって構成される「かながわ犯罪被害者サポートステーション」配布のパンフレットでは、「周囲の人の言動による傷つき」の事例として「配慮に欠けるマスコミの取材、報道」が掲げられている。これらを受け、被害者弁護士の仕事の一つは「メディア対策」であって、いかに報道関係者から被害関係者を引き離すか(接触させないか)にあるとされる。
実際には被害者を傷つける者の筆頭が報道関係者(メディア)ではなく、むしろ警察官・検察官・裁判官、加害者・加害者家族・加害者側弁護士、医療関係者、支援者、家族であったりすることが、研究調査報告書からも明らかではある(注6)。
しかし一方で、報道関係者の「悪事」がネット等で増幅され、メディアが人権侵害の元凶という悪イメージが固定化されているのは否定できない。また実際、遺族に対して事件や事故の発生直後に、いまだに大挙して取材攻勢をかけたり、「いまのお気持ちは」的な配慮がない質問の投げかけが続いていたりすることも数多く報告されている(注7)。
こうしたすれ違いのなかでの両者の直接的な接触機会の減少は、結果的に報道の必要性や意義を関係者に伝えることもできないまま、一方的に警察発表に基づく報道が先行する結果を生み、ますます被害者(家族)との距離を大きくしてしまう結果を生んでいる側面も少なくない。それは双方にとって不幸な事態といえるだろう。
実際に取材や報道による「2次被害」(トラウマ)が生じる可能性はあるわけで、こうしたトラウマの専門的知識なしに取材を行うことが、当事者の苦しみを増幅していることは否定できない(注8)。
(注5)2026年1月から開始され、法務省ウエブサイトでは「法テラスは、対象犯罪の被害者等からの問合せに対し、本制度や犯罪被害者支援の経験や理解のある弁護士の紹介を行い、被害者等は、紹介を受けた弁護士から、無料法律相談を受けることや、捜査機関や相手方に対する法的対応等の支援・代理などをしてもらうことができます」と記す。
(注6)平成19年厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業)「犯罪被害者の精神健康の状況とその回復に関する研究」分担研究報告書による。
(注7)被害者の心理的反応と時間的経過の基本的な知識も必要だ。被害直後の衝撃機(数時間から48時間)、急性期(数日から数か月)、慢性期(数か月から年単位)によって心理反応が異なるとされるが、これらも研究の深化によって変化がある。また当然のことであるが、すべての人が精神障害を発症するわけではないし、あらわれ方も人それぞれである。例えば『犯罪被害者に対する急性期心理社会支援ガイドライン』参照。
(注8)犯罪被害により衝撃や喪失とともに、2次的に生じるストレスがあるとされ、これには刑事司法上の手続き、民事訴訟、身体的・精神的治療、さまざまな機関との関係と並び、メディアへの対応が挙げられてきた。














