整備が進んだ犯罪被害者保護制度
こうした2000年代の変化の根底にあるのは、被害者保護のための法制度の新設だ。2004年に制定された犯罪被害者等基本法は3条で、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」と明快だ。同時に6条では、「国民は、犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏を害することのないよう十分配慮するとともに、国及び地方公共団体が実施する犯罪被害者等のための施策に協力するよう努めなければならない」と定められ、ここには当然ジャーナリストも含まれる(注3)。
基本法を受け政府は5年ごとの犯罪被害者等基本計画を発表している(2005年が第1次)。2026年度に第5次が発表されているが、内容にそれほど違いはない。
報道の関係で注目すべきは、「重点課題に係る具体的施策」の「精神的・身体的被害の回復・防止への取組」の中で定められた、法15条関係の「安全の確保」に関する規程である。ここでは「犯罪被害者等に関する情報の保護」として警察の被害者実名発表については「配慮する」ことが明文化された(注4)。これだけでは何を言っているかわからない一文だが、その真意は当事者の意向に沿うようにとの意味合いである。
法制定や基本計画策定の経緯のなかで、「被害者側意向=匿名発表」であるとして、原則警察は氏名を発表しないことを盛り込む考え方が示された。報道界は従来の警察と報道間の「慣習」を大切にして、原則実名発表を維持するように求め、玉虫色の決着をみたといえよう。
一方で2017年改正の個人情報保護法で新たにカテゴライズされた要配慮個人情報の1つとして「犯罪被害者情報」が含まれることになった。この点でも、警察が実名発表する際の扱いとしてより物理的精神的な壁になることは間違いない。
(注3)警察情報に基き被害者からの求めがなくても「犯罪被害者等早期援助団体」が介入できる仕組みもできている。また毎年11月末には「犯罪被害者週間」が実施されている。
(注4)「キ 警察による被害者の実名発表、匿名発表については、犯罪被害者等の匿名発表を望む意見と、マスコミによる報道の自由、国民の知る権利を理由とする実名発表に対する要望を踏まえ、プライバシー保護、発表することの公益性等の事情を総合的に勘案しつつ、個別具体的な案件ごとに適切な発表内容となるよう配慮する」














