「ドイツ製の『レオパルト2』は、ほぼ欧州標準戦車」「ベストセラーの戦車なんです」

今回イギリスは、チャレンジャー2を14両供給するという。もちろん第1弾であってこれで終わるわけではなかろうが、実際、領土を奪還するための戦車戦を行うためにはどのくらいの戦車が必要なのだろうか。

元陸上自衛隊 東部方面総監 渡部悦和氏
「ウクライナ側が要求しているのは“一個戦車旅団”を賄う数が欲しいといっています。つまり300両です。イギリスの提供する14両は圧倒的に桁が違う」

西側が供与する戦車として300両という数字は、果たして現実的なのだろうか。

東京大学先端科学研究センター 小泉悠 専任講師
「これまで西側が渡した戦車の数は、旧ソ連製の古い戦車が東ヨーロッパの国々に残ってたものですが、全部合わせると300くらいにはなりますよね。(中略)300あれば、ロシア軍に攻勢をかけられると思う。(―――西側の新しい戦車で300供給できますか?)できると思います。『チャレンジャー2』はイギリスしか運用してないですけど、ドイツ製の『レオパルト2』は、ほぼ欧州標準戦車みたいになっていて、ドイツだけじゃなくポーランドもスペインもいっぱい持っている。これを搔き集めれば300両は非現実的な数字じゃない。逆にこのくらいなければ反撃できない」

元陸上自衛隊 東部方面総監 渡部悦和氏
「ヨーロッパの国々に『レオパルト2』は2000両ある。それだけのベストセラーの戦車なんです。2000両あれば100両単位の供給は不可能じゃないと思う」

『レオパルト2』については、ポーランドもスペインもウクライナに供与する意思を示していた。しかし、生産国のドイツが首を縦に振らなかった。ロシアとエネルギーで深いつながりを持つドイツはNATOの方針に右へ倣えしながらも矢面には立ちたくなかった。西側の戦車を供給する1番手にはなりたくなかった。ただイギリスの今回の決断が潮目を変えるかもしれないと堤伸輔氏は言う。

国際情報誌『フォーサイト』元編集長 堤伸輔氏
「今回14台とはいえイギリスが『チャレンジャー2』を出す。これが他の国のタガを外して、もしドイツが戦車を供給することになればスペインもポーランドも『レオパルト2』を出せるようになる。アメリカも出しやすくなる」

ところが様々な国が、それぞれの国の戦車を供給するとなると、ウクライナ側に新たな問題も生じてくる…。

元ウクライナ軍参謀本部報道官 ウラジスラフ・セレズニョフ氏
「戦車のタイプが多いと補給の問題が発生します。修理、メンテ、計画点検を行う必要があり、それをやる人材を教育する必要がある」

それでもセレズニョフ氏は「ウクライナ人は団結して素早く解決する」と話した。

東京大学先端科学研究センター 小泉悠 専任講師
「いろんな戦車が来ると、予備部品一個とってもバラバラになっちゃうんです。ウクライナ軍は旧ロシア製の戦車とか、それをポーランドが改良した『PT‐91』とか、技術的に似たような系統の戦車を使ってるから・・・。問題はあるにせよ比較的整備しやすい。でも、そこに技術的にも全く違う系統の戦車が来る。『チャレンジャー2』は弾も違う。西側の戦車で唯一違う弾

アメリカでもその点から戦車を供給するにしてもヨーロッパから送った方がいい、つまりアメリカ製の戦車ではなく『レオパルト2』を送った方がいいという意見が出ているという。

東京大学先端科学研究センター 小泉悠 専任講師
「一番近くに製造元があって、尚且つ一番普及している戦車を送るっていうのは軍事的に合理的なのは決まっている。だからドイツがどう出るか、じゃないですか」

“戦車戦”の行方は、ドイツ次第のようだ。

(BS-TBS 『報道1930』 1月16日放送より)