桜島の大正噴火から今月で109年です。去年、噴火警戒レベルが一時、初めて最高の5に引き上げられた桜島ですが、火山活動の現状はどうなのか。今後への備えを含め、専門家に聞きました。

1914年=大正3年1月12日に始まった桜島の大正噴火。噴煙は1万8000メートル、火山灰や溶岩などの量は通常の噴火の10万回分に相当するおよそ30億トンとみられ、20世紀国内最大規模の噴火です。

噴火後にはマグニチュード7.1の地震も発生、死者・行方不明者は58人に及びました。このうち20人は避難が遅れ、海に飛び込むなどしておぼれ亡くなりました。

京都大学の井口正人教授は、このときに匹敵するマグマの量が、供給源とされる鹿児島湾北部の姶良カルデラにため込まれているといいます。

(京都大学火山活動研究センター 井口正人教授)「大正噴火級の大規模噴火は十分起こせる量がすでにあることが分かっている。自分たちが生きている間に起きる現象であると考えないといけない」

気象台によりますと、2022年に起きた爆発は85回。2021年の84回と同程度でした。去年7月の噴火では、噴石が基準の2.4キロを超えて飛んだため、噴火警戒レベルが一時5に引き上げられましたが、大規模噴火の予兆は見られませんでした。

「今は比較的おとなしい時期」としながらも「避難が必要になる事態に常に備えるべき」と話す井口教授。去年7月の噴火では、避難に課題があったと指摘します。

(井口正人教授)「レベル5に引き上げられたのも、噴火発生から45分ぐらいかかった。それから避難指示が出たのも、さらに1時間以上も遅れている。全体の動きは、やはり依然として遅いというふうに私は思う」

気象庁が先月、噴火の特別警報などを携帯電話のメールで知らせる「緊急速報メール」を廃止したのに伴い、鹿児島市は独自のメール配信の運用を始めました。

109年前の大正噴火では、避難が遅れた住民が死亡した例もあったことから、井口教授は市の役割を改めて強調します。

(井口正人教授)
「鹿児島市がそういう情報を転送するのは、結構なことだとは思うが、本来やるべきことは、いかに早く避難指示を適切な場所に、適切に出していくかがより重要になってくる。それが本来やるべきことだと思う」