ロシアとウクライナの戦争は開戦から4年以上が経過し、消耗戦の様相を呈している。この戦いで「戦争のゲームチェンジャーになった」と指摘されるのが、ドローン(冒頭の写真はウクライナ企業が開発した次世代の迎撃ドローン)などの無人兵器だ。ロシアや旧ソ連諸国の軍事・安全保障政策に詳しい東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠准教授に、ロシアとウクライナのドローン開発競争の実態や日本がこの新たな局面にどう対応すべきかについて聞いた。
両軍合わせて最大50万人の戦死者を出すも戦況は膠着状態
――ロシアが2022年2月にウクライナに侵攻したことによって始まった両国の戦争は、すでに開戦から4年以上が経過しています。現状をどのように見ていますか。
小泉 軍事的には全体的に膠着していると見たほうがいいと思っています。ウクライナのドネツク州南部からザポリージャ州の境のあたりで大変な激戦になっているものの、戦況図は何年も大きく変わっていないからです。
この間、ロシアがじわじわ押し込んではいますが、ウクライナを屈服させるには至っていません。かといって、ウクライナもザポリージャ州で反攻しているものの、3年前に失敗した反攻作戦と同じことを今年に入って行っています。これだけではロシアをこの地域から追い出すことはできないでしょう。
――今年6月時点で戦死者はどれくらいの人数になっているのでしょうか。
小泉 ロシア兵の死者数は、少し前まで25万人から30万人くらいと言われていました。最近では5月にイギリスの情報・サイバーセキュリティ機関が約50万人という数字を出し始めました。しかし、情報戦も行われていますので、私はこの数字は怪しいと思っています。
信用できるのはBBCとロシアのインターネットメディア「メディアゾーナ」による集計です。身元が完全に把握できている死者の数が約22万5000人で、実際の死者数は最大で約35万2000人にのぼる可能性があると6月5日時点で見ています。私は30万人前後と考えるのが中立ではないかと思っています。
一方、ウクライナ兵は身元が確認できている死者数が約14万人で、戦場での行方不明者を入れると20万人弱と見られています。
――ということは、両軍あわせて最大で50万人が戦死した可能性があるわけですね。
小泉 1年に12万人から13万人の兵士の命を飲み込んでいく戦争を、もう4年以上続けています。これほど長い戦争は、第二次世界大戦以降は他に例がありません。しかも、今年6月11日の時点で第一次世界大戦の1568日間を超えました。少なくとも20世紀以降ではヨーロッパで最長の戦争ではないでしょうか。
――当初は国力を考えると、ロシアが圧倒的に有利だと考える人が多かったと思います。そうなっていない理由は何だと思われますか。
小泉 大きく2つ理由があると思います。1つは味方をする国の数です。この戦争では戦場で残骸分析が行われていて、どの国の弾が使われているのかが分析され尽くしています。ロシアに弾を支援しているのは北朝鮮とインド、イランくらいです。中国はロシアからエネルギーを購入し、軍民両用のデュアルユース技術をロシアに売っているものの、弾は売っていません。アメリカやヨーロッパから軍事援助を受けていて、世界中から人道援助も届くウクライナと比べると、ロシアに味方する国は圧倒的に少ないですね。
もう1つは、国力の全てを戦争に投入できるかどうかです。これはその国の社会的・政治的文脈によって決まります。しかし、ロシアは戦争に投入が可能な男性人口の全てを動員できているわけではありません。プーチン大統領が国民からの支持を維持しながら戦争をするためには、国民全員を犠牲にすることはできない枷があらかじめはまっています。一部の人を高額な報酬で釣って戦地に行かせることしかできていません。
一方のウクライナも、国家を再建するためには若者が必要で、戦場に動員する年齢に枷がはまっています。動員対象は当初27歳以上だったのを、現在は25歳以上としているものの、さらに引き下げる状況にはなっていません。ただ、国家存亡の危機なので、ウクライナの方が相対的に課せられた制限は小さくなっているといえます。














