ウクライナのドローン開発の柔軟性とAIによる自律化
――ドローン技術としては、ウクライナがより進んでいる印象です。背景にはどのようなことが考えられますか。
小泉 ウクライナの方が、人命の損失に対してよりセンシティブにならざるを得ないことが挙げられます。それと、目新しいことを始めやすい土壌があります。2014年にロシアがクリミア半島を占領したときは、ウクライナの正規軍はボロボロでした。そこで各地に自警団が作られて、武装化していました。そういう部隊がたくさんウクライナ軍の中にあり、今も自活しています。
――自活というのは。
小泉 自分たちでクラウドファンディングをして金を集め、武器を買い込み、自分たちで改良しています。国家の意思決定があって動くのではなく、現場で工夫しながら動いています。日本の自衛隊が同じことをしたら政治問題になりますが、ウクライナ軍がものすごく柔軟性を発揮してロシア軍に負けずにここまで来たことは間違いないので、ある程度学ぶべきことがあると思っています。
それに、軍事イノベーションを促進するためのファンドを国防省とDX省と経済省が共同で作って、省庁横断で軍事スタートアップを支援しています。現在では兵器の50%は国内で生産されているようです。
興味深かったのは、政府系の機関が軍隊向けにAmazonのようなサービスをする「Amazon of War」を立ち上げていたことです。前線が必要としている医薬品や食糧などをネット上で注文すると、翌日には届けられます。このようなことを可能にしているのは、現在の国防大臣が前DX大臣であることも大きいと思います。
――ドローンの今後については、どんなところに注目していますか。
小泉 AIの搭載による自律化ですね。現状ではAIを積むと、重いコンピューターを搭載する必要があって、ドローンの機動性を失わせる可能性がありますが、今後はコンピューター自体も軽くなり、AIも簡単な環境で動くようになっていくと思います。
ウクライナを今年4月に訪問した際、唯一AIを積んでいると説明されたのが、地雷除去に使うドローンでした。地雷が埋まっていそうな野原を調査して、機上でAIが分析し、危険な場所を送信してきます。データが届いてから分析するよりも早く把握できます。
この技術は偵察衛星でも使われていて、アメリカでは衛星に載せたAIが有用な写真だけを選んで送ってきます。私も朝撮影されたロシア上空からの衛星画像を、昼には確認できます。AIによる意思決定や判断の高速化は、ますます進んでいくでしょう。
――アメリカではAIの軍事利用について、アンソロピック社が完全自律型兵器などにAIを使うべきではないとして、トランプ政権と対立しています。この点についてウクライナはどのように考えているのでしょうか。
小泉 国家存亡の危機なので、ウクライナはおそらく気にしていないでしょう。イスラエルは自動で目標を識別するAIを搭載したドローンを出してきています。
実は、人間による介在がなくても兵器がフルオートで作動する仕組み自体は以前からあります。日本の海上自衛隊のイージス艦も、全自動モードにすれば艦長以下人間が何もしなくても攻撃します。ただ、AIに任せるのはリスキーであることに変わりはなく、陸上での戦いでは様々な要因があって自動化はできていない状況です。
――ドローンの開発は、中国もかなり進んでいると思いますが。
小泉 中国はとてつもない数のドローンを生産していて、安価に供給することができます。民間企業が年間数百万機から数千万機と大量生産しているため、個々の部品の価格とクオリティ、量産性は、ウクライナが官需でいくら生産しても比べものにならないでしょう。
中国のドローン大手DJIが販売している機種で最もグレードが高い「マヴィック」については、中国がウクライナやヨーロッパに対して輸出規制を行っています。その一方でロシアには供給しています。だから、ウクライナやヨーロッパのドローンメーカーは、一様に「チャイナフリーを達成したい」と言っていますね。














