人を頼っていいと初めて学んだときに、全てが変わり始めた

セミナーでは、さらに当事者支援部に所属する2人の仲間も登壇し、それぞれの回復の軌跡を語った。

Cさんは、ギャンブル依存だけでなく薬物乱用にも陥り、オーバードーズ(薬物過剰摂取)で搬送されるほどの状況になってもなお「まだ自分でできる、まだギャンブルをうまくコントロールできる」と信じていた。

回復施設への入所を決意したきっかけは、妻の言葉だった。「もう離婚か、それともしっかり入院して治療するかどちらかだ」と言われ泣く泣く入院を決断した。

Dさんは、休職してから2、3か月間、家族にも職場にも嘘をつきながらギャンブルを続けていた。「まわりに入院しろと言われても聞けなかったが、最後に妻の一言を聞いて決断した」。しかし入院当初は「周りが全員敵に見えた」と語った。

転機は、回復施設での2、3か月後に訪れた。ギャンブルがない生活を楽しいと思えるようになった。ただそれだけのことが、ターニングポイントになった。また、「自分の力だけで何とかしなければ」という固執を手放し、「人を頼っていい」と初めて学んだときに、全てが変わり始めたという。

田中氏はこの変化を、こう分析する。

「ギャンブル依存症になると、自分勝手でわがままな強迫観念が頭を駆け巡る。しかし本人は、それが病気だとは気づかない。自分の脳が考え出すことが "おかしい" なんて、自分では分からないから病気なんだ」

回復した今、Dさんは嫌な感情もひっくるめて「それも自分だ」と思えるようになったと語った。

「元々の自分を、少しずつ取り戻せている気がする」

その言葉は、静かに会場に響いた。