「本人がピンチを自覚したときしかチャンスが来ない」

Bさんの入院から数か月後、母親のA子さん自身も息子との向き合い方を変えていった。

A子さん:
「(当初は)GPSを入れて、千円か2千円しか渡さず、領収書を持ってこさせていました」

だがギャンブル依存症の専門家から言われたのは、「その行動管理も金銭管理も、すべてやめなさい」という言葉だった。

耳を疑った。管理をやめたら、もっとひどくなる。その恐怖は誰でも持つ。しかし家族会のなかで繰り返し聞かされることで、少しずつ理解が変わっていった。

セミナーに登壇した「ギャンブル依存症問題を考える会」代表の田中紀子​氏は、家族の行動管理を「釣り」に例えた。

「釣りで魚を釣るのは、じっと待つ時間が長い。魚は満腹のときに餌に食いつかない。それと同じで、本人がピンチを自覚したときしか、(矯正の)チャンスが来ない。家族が肩代わりしていると、そのピンチが訪れない」

家族が焦り、騒いでも、肩代わりされた本人の"お腹が空いて"いなければ、動かない。大切なのは、"底"を体験させること。その作戦会議こそ、家族会の最初の一手だと強調した。