「どこに逃げればいいのか」爆撃があるたびに向かう救急車 120万人が避難

ヒズボラの拠点が置かれている南部の中心地・ナバティエ。5月26日、イスラエル軍が新たに住民に退去を勧告した戦闘地域の中に位置する。

街中から人影が消えていた。

丘の上にあるのが、この町で唯一機能している総合病院だ。眼下には住宅地が広がっているが、4月には病院近くで大規模な空爆が行われた。現在は、地上侵攻の脅威も差し迫っている。

ジャーナリスト 遠藤正雄氏
「丘にビューフォート城というのがありますが、イスラエル軍はそこまで侵攻してきています」

病院のすぐ先には、この2日前にイスラエル軍が地上侵攻して制圧した、ビューフォート城がある。軍事上重要な拠点で、イスラエルのネタニヤフ首相は城の制圧を「劇的な転換点だ」と称賛している。

病院は攻撃されていないが、今働いているのは救命救急に携わる50人ほど。他のスタッフはベイルートなどへ避難したという。

──病院を運営するなかで一番の課題は?

シャフィ・ファアーニ医長
「戦争状態のため、平時のようにスタッフ全員が揃うことは困難だ。今も患者が何人か手術室の中にいる。高齢の男性の手術は、あと20分ほどで終わる」

住民のほとんどが避難し、残された高齢者らが爆撃に遭うケースが多発しているという。

運ばれてきたのは、5時間に及ぶ緊急手術を終えた73歳の男性だ。この日の朝、車を運転中にドローンから攻撃を受け、脳内出血や多数の骨折など、瀕死の重傷を負った。

シャフィ・ファアーニ医長
「彼らは行く当てが無い。この場所に残った高齢者は逃げて死ぬよりも、自分の家で死ぬことを選んでいる」

──彼はどのくらい危険な状況?10段階で最も危ない10ですか?
「10です」

──心拍数などを表示するモニターはありますか?
「ありません。モニターはもとから付いていません」

男性はさらに高度な治療が必要で、約60キロ離れたベイルートの病院に運ばれていった。

病院の前には83歳の男性が座っていた。自宅近くが爆撃され、行くあてを失って逃げてきたという。

83歳の男性
「けさの爆撃で耳をやられてよく聞こえない。爆撃で全てを失った」

取材中にもひっきりなしに爆撃音。黒い煙が立ち上った。

爆撃があるたびに病院から現場に救急車が向かい、助けを求める人を見つけては、この場所まで運んでくるのだという。

救出された女性
「神様が守ってくれたが、今朝の爆撃は異常だった。隣家の女性は爆撃で亡くなった。みんなどこに逃げればいいのか、もう疲れ切っている」

国連によると、イスラエルの攻撃でレバノン南部から避難を余儀なくされたのは、120万人と推計されている。