マスタープランの不在と広がる「芸術格差」
私は、例えば首都圏では、東京文化会館と神奈川県民ホールが同時に休館になっていることが大きな問題だと思っています。欧米を中心とした文化都市では、公共のホールと民間の楽団や財団が施設の長期的な目標や全体像(マスタープランと呼ばれます)を共有して、改修時期を分散したり、代替施設を確保したりするような文化が根付いています。
あるホールが改修する場合、別のホールは改修時期が重ならないようにし、またホールを改修する際には、その代替となるホールを準備するということです。ですから、日本のこの事態は劇場文化の貧しさを表しているという厳しい指摘もあります。
首都圏以外では何が起こっているかといいますと、先ほど紹介した福岡市民ホールのような主要都市の最先端のホール、改修で長期的に使えなくなるようなホール、閉館していくホールという、三極化が進んでいると私は分析しています。
こうした問題を放置すると大きな事態に発展します。一つは海外の有名なオペラやバレエの団体が日本に来てくれなくなるという問題。それから、芸術に触れる機会の格差が広がってしまうという問題です。九州では、福岡ではオペラが観られるのに、他の地方都市では観られない、国際的にはドイツやイタリアでは観られるのに、東京では観られないということになりかねません。これは特に、これからさまざまなことを学び、成長していく子供たちにとって、ゆゆしきことです。
これからもまだまだ、ホールの改修や建て替えが進んでいきます。今日お話ししたような問題に発展しないように、海外のようにホールや自治体、民間がマスタープランを共有して、芸術に接する格差を生まないようにしてほしいと思います。最終的には資金が問題になりますので、国や大企業が関わっていく問題ではないかと私は考えています。
◎山本修司

1962年大分県別府市出身。86年に毎日新聞入社。東京本社社会部長・西部本社編集局長を経て、19年にはオリンピック・パラリンピック室長に就任。22年から西部本社代表、24年から毎日新聞出版・代表取締役社長。














