中身は「ロケット会社」ではなく「通信会社」
スペースXは、いったい何で稼いでいるのでしょうか。
稼ぎ頭は、ロケットではありません。衛星インターネットの「スターリンク」です。地球の周りを回る人工衛星から、直接インターネットの電波を届けるサービスで、これが売上の約6割を占めています。一方、本業のはずのロケット、宇宙事業は売上の2割ほど。残りの2割は、アメリカ政府からの収入です。つまり中身は、「ロケットの会社」というより「通信の会社」になっているのです。
しかも、その通信サービスの規模も、世界を相手にしているわりには、まだ小さい。スターリンクの加入者数は約1030万件です。これは、日本の携帯電話でいうと、4番手の楽天モバイルとだいたい同じくらいです。ちなみに国内首位のNTTドコモは約9200万件ですから、その差は歴然です。
さらに驚くのが、会社全体で見ると、スペースXはいま赤字だということです。2025年の最終損益は、8000億円近い赤字でした。黒字を出しているのは、実はスターリンクだけで、ロケット事業も、AI事業も赤字なのです。
会社としては赤字。通信の契約数も楽天モバイル並み。それなのに、時価総額はトヨタの6倍。この大きな食い違いは、いったいどこから来るのでしょうか。
投資家が買っているのは「未来のスペースX」
ここに、資本主義のいちばん大事な原理が隠れています。
カギを握るのは、スターリンクが持つ「毎月、安定して入ってくるお金」です。通信サービスは、契約者が毎月決まった料金を払ってくれます。つまり、来月も再来月も、そして来年も、どれくらいの売上になるかが、かなり正確に読めるのです。
投資家というのは、「これから、いくら儲かるか」が読める相手にこそ、安心して大きなお金を出せます。逆に、未来がまったく予測できない相手には、なかなかお金は集まりません。スペースXは、スターリンクという「計算できる未来」を手に入れました。だからこそ、その何倍、何十倍もの大きな夢に、お金を引っ張ってこられるのです。
283兆円という値段は、いまのスペースXの実力に対して払われているのではありません。投資家は、「未来のスペースX」に、まとめてお金を張っているのです。赤字でも、契約数がまだ少なくても、その先に計算できる成長が見えているなら、値段は伸びていく。これが、株式市場の論理です。














